2021年1月4日 12:00 AM
トラベルジャーナルが観光業界のキーパーソンに実施したアフターコロナの世界についてのアンケートから、自由記述欄の回答を紹介する。アンケートの結果は週刊トラベルジャーナル21年1月4・11日号[1]で。
「過去に例をみない観光革命、まさにパンドラの箱をコロナが開けてしまった。漸進的な革命では対応できない。業界なり観光等の急速なアタマの切り替えこそ大切(私も切り替えられていない)」
「もうアフターとはいえないのではないか。コロナとともに生き、そして生物兵器にもおびえる世の中になるように思う。もう大きな核兵器よりも生物兵器のほうが世界を震撼させることができることが明らかになった。広がってしまった時の経済を止めない防衛策をいまのうちから真剣に検討すべきである」
「人類の遺伝子が持つ本能的な行動欲求ともいえる移動=旅の効用が再認識される。リアルな移動によって訪れた地域で五感を使ったコミュニケーションで得る情報が、心の豊かさや人間的な成長につながることの価値がこれまで以上に高まる。一方で移動に制約がある環境に置かれた人に、バーチャルな移動=旅を提供することに新しい価値が生まれている。リアルとバーチャルの移動=旅の共存がこれまで以上に人類に幸福をもたらしてくれることを期待している」
「アフターコロナではなく、ウィズコロナ時代に対応する企業経営が必要。ハード整備の競争ではなく、働く従業員から提供されるサービスで差別化していくには、経営理念などの企業としての存在意義などの本質を理解させ、エンパワーメントにつながる人材育成が必要」
「GoToのような国の施策や各自治体が行う宿泊助成金やクーポンキャンペーンに一喜一憂するのではなく、自社の永続責任を果たすために自分たちはいま何をするべきかを考える経営者が今後も生き残っていくはず。過去の成功体験を踏襲するだけの経営者は経営を放棄しているのと同じ。外部環境や人の責任にするのではなく、自ら動き、そして地域として連携する企業こそがお客さまに選ばれる時代になるのは間違いない」
「9.11を契機に空港等のセキュリティーが厳格になったが、いまではわれわれはそれを当然のように受け入れている。コロナによってツーリズムも大きく変容するだろうが、それを受け入れて発展していくことを期待している。10年後に振り返った時にコロナが新たなツーリズムを生み出す契機だったと思いたい」
「そもそも観光業という業種はなく、宿泊業や小売業、アクティビティー業などのコンテンツの中で域外の顧客向けにカスタマイズされたのが観光である。皆が観光業者、旅行代理店という気負いから解放され、またツアー、旅行商品というフレームから解放されて、自由な発想で域内外の人にオンライン・オフライン問わずコンテンツを生み出そうとするようになればと思う。例えば、旅行代理店はツアーを売らなければならないと必死にオンラインツアーの開発をしているが、ニーズが追い付いておらず、しばらくすると縮小してくると思う。半面、ツアー形式にこだわらない双方向の上質なオンラインコンテンツは生き残っていく。そのように自分たちでフレームを規定せずに自由に発想し、工夫できたプレイヤーが生き残っていくのだろう」
「もっと儲かる旅行・観光産業を平素から確立しないといけない」
「出張や休日の大きな旅は見直され、オンライン化が進むとコンシャストラベルの幅が広がる。いままでいつでも行けると思っていた場所(バケットリスト)を選ばず、絶対に行きたい旅先(ショートリスト)を選ぶ。一度の旅で滞在箇所は少ないが長期化する。そのため、ホテル滞在より民泊やワーケーションができるコンドミニアム、大手大規模より地元資本の宿やレストランでその土地ならではの旅を選ぶスタイルを支持する人が増えてほしい。ビフォーコロナは経済優先や数ありきの政策や事業が支持され、観光公害という産業の歪みまで生じていたが、グリーンリカバリーを主眼とする経済のあり方に変換し始める世紀の過渡期になったと思う。人間は旅をし続けるが、その旅のあり方を再考するいい機会になった。アフターコロナに持続可能性を問う観光産業となることを想定し、SDGsをはじめ、将来に投資していただきたい」
「安心・安全はコストと無縁ではない。必要なコストをかけても利益を得られるように、企画力と提案力を一層高めて付加価値の高い旅行を創造することが大切」
「旅行・観光産業に携わる事業者だけでなく、お客さま=旅行者もそれぞれの立場で、お出迎えする、訪問するというお互いのことを思いやり、行動することができる社会をつくっていく必要がある。人が動くと経済が動き、人の心も動く、という旅の生み出す素晴らしさを伝える使命がある」
「アフターコロナの世界到来までの時間が、ある意味ニューノーマルな社会への助走期間でもあるように思う。痛み、傷ついた人や企業、社会も多いだろう。変化を受け入れ、チャンスを見いだし、動き出す。禍を転じて福となせることを願う」
「コロナ禍によってオンライン会議が一般的となったように、デジタル化の重要性が高まり、社会全体が大きく変容している一方で、人と人との交流や実際に当地を訪れることの必要性も再認識され、デジタルでは解決できないものも大きい。デジタルに注目が集まるなか、デジタルとアナログどちらかに偏重するのではなく、両者のバランスをうまく保ちながら、それぞれの良さを取り入れることが地域の活性化や観光・旅行業界の発展につながると考える」
「同時多発テロやSARS禍の時は『いつか元に戻る』ことを前提にリカバリーが打たれてきた。『もう戻らない』を前提に体系立ててモノを考えられるかどうか。そこにかかっている気がする」
「アフターがいつ来るかわからない状況ではあるが、この事態をいままで放置した気候変動の結果であるというような、この状況を生み出したのは他者ではなく自分であると認識できるヒトが増え、対症療法としてアフターを目指すのではなく、これを経て新たな社会をどう形成するかという自分ゴト化したヒトが増え、そういったトレンドができることを期待する」
「日経平均株価は1991年のバブル経済崩壊時点以来の高値を先日記録した。国際観光についても、本質的な価値は物理的な国際交流でしか得られないのだとすれば、現在は人々の欲求が押さえつけられている状態である。この爆発回復期にいかに備えられるかがポイントと感じている。しかし日本の観光業はコロナで壊滅的な打撃を受けてGoToで息を吹き返しているものの、足元は再び感染が拡大し、予断を許さない状況である。いかに企業体力をキープして、いまを生き抜き、インバウンド需要回復期に備えられるかが重要だと思う」
「とめどないただの利益追求型の社会から、落ち着いた持続可能な成長・成熟を求める社会に変わっていくと思う。旅の形態もおのずから変わっていく」
「どうみてもわくわく」
「不安でしかないが、会社を存続させるためにあらゆる手を使ってがんばっていきたい」
【あわせて読みたい】アフターコロナに思う②[2] アフターコロナに思う③[3] アフターコロナの世界[4]
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