EU域内の移動にガイドライン

2020.12.14 00:00

 欧州連合(EU)27カ国は10月13日、ルクセンブルク会合で、域内の移動について共通の旅行ガイドラインに同意し公表した。目的はコロナ禍による域内旅行の混乱を回避し、最終的にEUの大切な理念である市民の自由な移動を取り戻すことであろう。

 3月のウイルス発生に伴い、加盟国の多くが域内の自由な移動を保証しているシェンゲン協定に反する国境封鎖や外出制限等の規制を実施した。その後、感染の多少の沈静化に伴い規制の緩和が行われた。6月には各国の採用しているコロナ対応策(検査、隔離、交通機関の実勢など)のウェブサイトRe-openEUを開設した。

 その後、夏季バカンスの時期を迎え、移動の規制緩和に伴い、各国民の旅行やリゾートへの大量移動が実現した。さらに経済再建の動きが加わり、ウイルスの再発が起こり、10月末の時点で第2波といわれる第1次より深刻な大量の新規感染拡大が欧州各国を襲っている。

 今回のガイドラインは、EU共通の基準と枠組みを再確認して各国の連携を強化し、EU全体として整合性のある対応策を目指す意図と思われる。

 具体的にはすべての加盟国が、感染状況、具体的対応策、国境封鎖、外出禁止令等の措置などの情報を毎週、欧州疾病対策センター(ECDC)に集約し、ECDCは各国の現況を常時把握し、それぞれの国の地域別にリスクレベルをグリーン、オレンジ、レッドに以下の基準で分類する。

・グリーン=前週の検査での陽性率4%以下で過去14日間感染者が人口10万人当たり25人以下。

・オレンジ=前週検査陽性率4%以上で14日間感染者が人口10万人当たり50人以下、あるいは陽性率4%以下で14日間感染者10万人当たり25~150人。

・レッド=前週検査陽性率4%以上で14日間感染者人口10万人当たり50人以上、あるいは14日間感染者10万人当たり150人以上。

 ECDCはこの情報により地域ごとに彩色した地図を毎週木曜、ECDCとRe-openEUウェブページに掲載する。10月末の時点ではほとんどの国・地域がオレンジかレッドである。なお、他に一時的な理由などで十分な情報の得られない国・地域はグレーに分類される。

 グリーン地区からの旅行者は、EU域内すべて自由に移動できる。グリーン以外からオレンジ、レッドへの移動は原則的に受け入れられるが、受け入れ国の判断により到着時検査または隔離(あるいは両方)が課せられる。EUガイドラインに法的強制力はなく、さまざまな対応策は各国政府の判断で実施される。

 なお、加盟国の住民が国外へ旅行し帰国の際には、公平の原理で他地域からの住民の入国と同じ規制が課せられる。また、家庭内(葬儀など)や業務上必要不可欠な移動、医療措置の移動、勉学目的の移動などでは隔離は免除される。

 最新の入国規制などの詳細情報はRe-openEUに掲載される。各国は新しい規制の導入に際しては、原則24時間前に公表する。

 10月末のECDC地図上のグリーンは北欧やギリシャの一部の極めて狭い地区だけである。EUの大半がグリーンに染まる日が果たして来るのだろうか。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。

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