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ワーケーションの企画術 コロナの時代の市場アプローチ

2020年10月5日 12:00 AM

(C)iStock.com/william87

ワーケーションへの注目度が高まっている。コロナ禍のもとでテレワークの必要性と重要性がクローズアップされたことも影響。政府・各省庁や自治体もワーケーション推進を強化しており、民間による新規プロジェクトも目白押しだ。

 7月27日の観光戦略実行推進会議で菅義偉官房長官(当時)がワーケーション推進について発言。「テレワークを活用して、リゾート地、温泉等で余暇を楽しみつつ仕事を行うワーケーション、さらにはそうした地域に企業の拠点を設置するサテライトオフィスは、新しい旅行や働き方のスタイルとして政府としても普及に取り組んでいきたい」と述べた。同29日の定例会見では、宿泊施設等で仕事ができるようにするためWi-Fi整備支援や休暇取得分散化や促進といったワーケーション普及に欠かせない環境整備について、観光庁や環境省などと連携しながら進めていくとした。ワーケーション推進に意欲を見せる菅氏が新総理となり、普及がさらに加速することも想定される。

 観光庁はワーケーションスペース等の改修の支援も含む宿泊施設バリアフリー化促進事業と、Wi-Fi環境整備等を支援する宿泊施設基本的ストレスフリー環境整備事業を進め、9月には2期公募を締め切った。

 環境省は国立・国定公園への誘客推進とコロナ禍収束までの間の地域の雇用維持策の一環として、国立・国定公園や温泉地でのワーケーション推進に力を入れる。地域経済の下支え、ワーケーションを通じた平日の観光地活性化に寄与できると期待するからだ。同省はコロナ禍を受け感染リスクの少ない自然の中でクリエイティブに仕事できる場として国立・国定公園や温泉地でワーケーションが可能なことを発信。20年度補正予算ではワーケーション推進事業費補助金の補助事業者として151事業者を採択した。

 地方自治体の機運も高まる。17年からワーケーションを推進する和歌山県は長野県と共に、昨年7月にワーケーション・スタートアップ宣言に署名。日本テレワーク協会を加えた3者が中心となり11月にはワーケーション自治体協議会(WAJ)を設立した。設立時に71自治体(1道6県64市町村)だった会員は、今年9月13日時点で104自治体(1道11県92市町村)に増えている。

 地域の機運はコロナ禍でさらに高まっている。昨年度からワーケーション推進事業を開始した長野県千曲市は、コロナ禍によるテレワーク需要の高まりを受け、宿泊施設や飲食店にワーケーション導入支援補助金を創設した。北海道の倶知安観光協会は8月にワーケーションのためのワークプレイス(シェアオフィス)の試験運用を実施。ワーケーションニセコ事業を本格的に開始した。日光市はNTT東日本との実証実験を8月下旬に市内のホテルを利用して実施。今後は観光協会を加えた3者でワーケーション促進による地域活性化に取り組む。

仕事のストレス4割低減

 民間企業の取り組みも話題に事欠かない。日本航空はコロナ禍後のニューノーマルに対応する新しい旅の形の提案の一環として、同社国内ツアーサイトで星野リゾートやプリンスホテルズ&リゾーツの宿泊施設を組み込んだワーケーションにも活用できる旅行商品を販売。一方で自社のワークスタイル改革の一環として社員によるワーケーション検証を行う。具体的には、10月頃から半年ほどかけて愛媛県、石川県、岩手県、兵庫県、宮崎県の各地域に5~10人程度の社員を赴かせ、社員にワーケーションを実践しながら社会貢献活動などにも参加してもらう計画だ。

 JTBは昨年、ハワイでのワーケーションサービス開発や自社社員のテレワーク制度「ワーケーション・ハワイ」などに取り組んだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年10月5日号で】[1]

Endnotes:
  1. 【続きは週刊トラベルジャーナル20年10月5日号で】: https://www.tjnet.co.jp/2020/10/04/contents-52/