海外旅行復活のロードマップ 来るべき再開に向けて

2020.09.14 00:00

海外旅行再開への扉は少しずつ開き始めているのか…
(C)iStock.com/releon8211

国内旅行が再開にこぎ着けたいま、次の照準は海外旅行の復活だ。まだまだ険しい道のりを覚悟しなければならないが、光明を見いだすことも不可能ではない。まずは業務渡航から往来を再開する動きも出てきた。旅行業界は海外旅行復活に向けどのようなロードマップを描くことができるのか。

 日本からの海外旅行には二重、三重の壁が立ちふさがっている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、外務省は3月25日に全世界を対象に一律で危険情報のレベル2(不要不急の渡航は止めてください)を発出し、現在も維持したままだ。危険度の高い感染症に関して渡航の注意が必要と考えられる国・地域に発出する感染症危険情報は、8月26日時点で159カ国がレベル3(渡航中止勧告)に該当し、それ以外の国々にも一律にレベル2が発出されている。これにより、募集型企画旅行を中止する旅行会社がほとんどで、3月以降は日本からの海外観光旅行のほとんどが全方面でストップしている状況だ。

 JTBは10月いっぱいの海外ツアー中止を発表しており、エイチ・アイ・エス(HIS)も9月30日出発まで設定はない。主要旅行会社の大部分が9月か10月まで中止の措置を取っており、さらなる延期も考えられる。

 旅行会社に頼らずに航空便を確保できたとしても、日本人の入国を拒否する国や、入国できても到着後に14日間の隔離生活を求める国が大多数だ。入国制限を設けているのは9月1日時点で122カ国・地域に上り、韓国、中国、香港、台湾、タイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、ドイツなど主要デスティネーションが含まれる。入国後の行動制限を設けているデスティネーションも98カ国・地域(入国制限と重複あり)で米国やイタリアが含まれる。これらの壁を乗り越えて海外旅行をして帰国したら、再び14日間の隔離生活を強いられる。いま海外に渡航するのは非現実的といわざるを得ない。

 世界観光機関(UNWTO)によると、国境を完全に封鎖しているのは7月19日時点で115カ国・地域あり、世界中で国境制限が行われているケースがまだまだ多い。しかし、観光再開の動きも見られる。同報告によると、全世界の4割に当たる87カ国・地域が国際観光客の受け入れを再開しており、うちヨーロッパが41カ国・地域で、20カ国の島嶼国とともに観光再開の先陣を切った。感染防止のために講じていたすべての制限を解除した国も4カ国(アルバニア、セルビア、タンザニア、モルディブ)ある。

 たとえばモルディブは、7月15日から日本を含む世界各国からの旅行者の受け入けを再開した。しかも入国の際には14日間の検疫隔離措置やPCR検査結果の陰性証明書の提出も不要とした。ただし、モルディブのようにデスティネーション側が日本人観光客を受け入れてくれても、日本側の送り出し体制が整わなければ海外旅行の復活とならないことはいうまでもない。送り出し側と受け入れ側の相互の連携が不可欠だ。

アジアの業務渡航から再開

 その連携が最初に図られる分野は業務渡航からになりそうだ。政府は6月に国際的な人の往来再開に向けた段階的措置を発表し、ビジネス上で必要な人材等の出入国については、追加的な防疫措置を条件とする仕組みを試すとした。対象国は感染状況が落ち着いているベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランド、カンボジア、シンガポール、韓国、中国、香港、マカオ、ブルネイ、マレーシア、ミャンマー、モンゴル、ラオス、台湾の16カ国・地域。

 7月29日からは、駐在員の派遣・交代や長期滞在者などを対象とするレジデンストラックと呼ばれるスキームがスタートした。PCR検査証明や相手国への入国時と日本帰国時の14日間の自宅待機は維持されるが、双方向の往来が可能になった。まずはタイとベトナムとの間で開始し、9月にはマレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマーとのレジデンストラックを開始する。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年9月14日号で】

関連キーワード