観光地経営のいま コロナの時代に挑むDMO

2020.09.07 00:00

(C)iStock.com/mevans

観光旅行の需要回復の牽引役として期待が集まる国内宿泊旅行。GoToをはじめとする各種キャンペーンが徐々に成果を上げつつある。しかし本格回復は秋以降とされ、各地域もコロナ前の戦略を軌道修正しながら、DMOを中心に新しい観光需要の創出に挑むことになる。

 コロナ禍はわれわれが想像、あるいは期待したようなペースで収束に向かいそうにない。どうやら、より長いタームで新型コロナウイルスとの付き合い方を考えていく必要があり、観光産業には共生のフェーズを受け入れる覚悟が求められる。

 感染症の拡大がなかなか収まらず、交通機関における感染症対策や衛生管理、さらには国境管理を含めた移動に関するさまざまな制約が続くなかで、目下の頼みの綱は国内旅行である。

 政府は疲弊した観光事業者・地域の支援の必要性を掲げGoToトラベルの実施を急ぎ、7月22日からキャンペーンを開始。当初は8月開始が検討されたが、予定を前倒しして国内旅行の需要喚起に踏み出した。直前になって感染者数拡大が止まらない東京都を除外する条件を付けたため、需要喚起効果が疑問視されただけでなく、東京除外に関連したキャンセル料問題も発生。旅行業界はキャンペーン効果を享受するより、制度に振り回された面がクローズアップされた。

 それでも、GoToトラベル実施を見込み、先行して各自治体が取り組んだ各種キャンペーンや、それらの継続による成果は着実に上がっているようだ。地域住民限定の宿泊割引プランなど、想定を上回る予約件数が集まるケースも少なくない。

 北海道ではコロナ禍で落ち込んだ旅行需要の早期回復のため、道民の旅行代金を1人1泊につき最大1万円補助する独自の観光復興支援策「どうみん割」を実現。6月28日の第1弾から、すでに第3弾まで発売したが、販売を担った大手旅行会社やOTAなどでは完売が相次いだ。

 長野県も県民向けの旅行代金割引と観光地で利用できる地域観光クーポンを組み合わせた「ディスカバー信州県民応援割」を用意。1人1泊当たり5000円の割引と2000円の観光クーポンを補助することで県内の旅行需要を刺激した。6月26日に発売したが、好評を受けて7月3日には2万泊分を追加発売することになった。

 静岡県はGoToトラベルに先立ち、6月中旬から「バイ・シズオカ~今こそ!しずおか元気旅!!」キャンペーンを展開。静岡県民限定で1人1泊最大5000円割引する宿泊クーポンを提供する内容で、7月22日からは対象を山梨、長野、新潟の各県民にも拡大。大手旅行会社やOTAの販売サイトを見ると「完売」の文字が並ぶ。

 地域の旅館・ホテルの組合などもクーポン作戦を展開している。たとえば箱根温泉旅館ホテル協同組合は、箱根温泉プレミアム付き宿泊券を販売。組合加盟の宿泊施設で利用できる1万円分の宿泊券を5000円で販売するプレミアム額面のクーポンとなっている。組合が運営する宿泊検索・予約サイトを通じ6月29日に発売したところ、限定1500枚のクーポンに注文が殺到。販売システムに不具合が発生してしまうほどだった。

シニアの旅行意欲は依然低調

 動き始めた国内旅行への期待は旅行会社の間でも高まりつつある。これまで海外旅行専門をうたっていた旅行会社や、海外旅行を中核事業としてきた旅行会社も、国内旅行に参入したり国内事業を積極的に強化している。

 旅工房は6月に国内旅行への参入を発表し、北海道や沖縄への国内旅行商品を発売。7月末にはGoToトラベルへの事業者登録を完了し、国内旅行専用公式ツイッターも開設した。エス・ティー・ワールドも今年は国内の日帰り1泊エリアのビーチ商品を強化し、都内からのバスツアーを用意。新宿・池袋発の「三浦半島・三崎でシーカヤック&シュノーケリング・三崎のマグロ丼を楽しもう」などを販売した。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年9月7日号で】

関連キーワード