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ステイケーションに投資するか

2020年9月7日 12:00 AM

 島国の英国でも海外旅行が難しくなって、ステイケーションが拡大していることから、英フィナンシャルタイムズ紙は国内リゾートでの貸別荘投資が有利になっていると報道している。

 ステイケーションは国内目的地に短期滞在して、スポーツなど自分流のさまざまな余暇活動を行う形態という。それに必要な用具の販売が盛況だ。自転車販売店では売り切れが続出し、サーフボード、テント、キャンプ用コンロ、空気注入式カヌーなど店の棚が空になっている。新車登録も急増し(7月は前年同月比11%増)、この夏のホリデイコテージは満室、キャンプサイトも同じだ。

 この環境で余分の現金を持つ人には、休暇用貸別荘への投資がお勧めだ。現在の低金利で資金運用に有望な投資先は少ない。英中央銀行の0.1%の利率で複利計算すると預金が2倍になるのは694年先。貸別荘の需要は大きい。その購入における印紙税は切り下げられ、休暇用別荘の税率は非常に有利だ。事業用賃貸で年間105日以上利用されると、資本譲渡控除と企業家減税(10%)を請求できる。利益は年金目的収入とみなされ経費と減価償却費も控除できるので、副業として人気だ。

 コロナ以前から国内のビーチなどへの短期旅行は確実に根付いている。バークレイズ銀行の報告では、昨年に国内旅行者の30%が英国内の旅行を増やす計画をした。特に有意義な体験を多くしている若者が熱心で、25~34歳の半数以上に国内旅行計画がある。

 背景には環境に対する低インパクト旅行への共感もあるが、その需要が事業者の収入増になることが大きい。ステイケーションへのシフトはコロナの拡大で促進されたが、テレワークやデジタル化の進展もトレンドを後押しする。休暇用貸家の抵当に関する問い合わせが増えていると住宅融資業者が報告している。

 昨年、英国人旅行者は490億ポンドを外国で支出したが、いまは多くが自宅滞在だ。各種調査によるとロックダウンで貯蓄が増え通常より手元資金がある(英国中央銀行調査)。労働者の70%以上が4月に全く旅行しておらず、自宅待機で有給休暇を消化していない。

 時間と金はあるが、人気のスペインなどでコロナが拡大、隣国フランスも感染率が英国より高く、渡航は不安だ。何より突然導入された2週間の帰国者検疫隔離は海外旅行を抑制する。国民、特に航空会社に不満はあるが、政府の巧妙な国内旅行促進策になっている。

 貸別荘投資で留意すべきは、財政難の政府が突然税率を引き上げる可能性だ。苦しんでいるホテル産業と競合する資産を課税対象にするのは反対が少ない。またステイケーションが一時的現象で、海外旅行が好きな英国人はただ我慢しているだけなのか一考の必要はある。

 統計によると人口は12%しか増えていないが、英国人の海外旅行は16年に20年前(1996年)から70%増えた(4500万人)。この上昇傾向が時に停滞するのは、何らかの危機が発生して節約のために自宅にとどまるからだ。例えば2012~13年には英国の国内旅行実施率が26%から30%に増えた。ステイケーションが新たなトレンドになればよいが。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。