旅行代金は高くなる? 変化予測と対応のアイデア

2020.08.10 00:00

(C)iStock.com/pamela_d_mcadams

コロナ禍でようやく国内旅行の再開にこぎ着けた旅行業界。今後は感染予防対策との両立を図らねばならず、コスト上昇は避けられそうにない。事業者は安心・安全や品質を確保するために必要なことと捉えたうえで、需要分散化やデジタル活用による効率化などの対策が求められそうだ。

 旅行再開に当たり、感染拡大防止に努めることは、旅行関連事業者と旅行者の双方に求められる必須の課題だ。とりわけ事業者は各業界が定めたガイドラインに沿った対応が求められ、安全を担保するための措置を講じることでコスト上昇が見込まれる。加えて、原価率上昇と利益圧迫の要因となりそうなのが旅行者の安心を確保するための対策だ。たとえば、航空業界や貸切バス業界の安全対策をまとめたガイドラインでは、座席を空けることによるソーシャルディスタンスの確保は求められていない。しかし、旅行者に安心感を提供したい航空会社や、貸切バスを利用する旅行事業者は、ソーシャルディスタンスの確保を重視。航空機やバスの本来のキャパシティーのうち一定割合を空席として確保し、ゆとりあるスペースを保つ事例が目立つ。こうした措置は効率性とは相反するもので、価格に転嫁されれば旅行コストを押し上げる要因となる可能性が高い。

 日本航空(JL)は4月末から、国内線の各クラスや国際線のエコノミークラスなどで一部の座席を空席としてブロックし、販売を見合わせた。海外でも同様の動きがあり、米国ではデルタ航空(DL)やアメリカン航空(AA)が空席確保の措置を取った。DLはこの措置によって座席使用率を米国内線のファーストクラスで50%、エコノミークラスやプレミアムエコノミーで60%、ビジネスクラスでは75%に抑制した。その後、AAは6月1日、JLは6月末まででこの措置を終了したが、当初は6月末で終了を予定していたDLは9月末までの延長を決定した。航空業界にはこのような空席確保を約束する方法を否定する意見もあり、「安全対策ではなくPR戦略にすぎない」とする米国の大手航空会社もあるが、DLは逆に10月末までの延長も検討しており、ソーシャルディスタンス確保を今後も続けていく構えだ。

 旅行会社も旅行者の安心感の醸成に注力する。クラブツーリズムは感染予防を重視した新基準のツアー「クラブツーリズム ニュースタイル」を新たに展開。バスツアーは参加人数を限定し、8月出発分まで貸切バスは1人2席または窓側席のみの利用とした。たとえば首都圏発の日帰りバスツアー「希少品種!千葉アクアメロンをご賞味&地場産品の産直市 房総産イセエビ2本食べ比べ!豪快房総海の幸御膳」(1万4900~1万7900円)は19人限定・窓側のみ利用で催行する。

 こうした措置による運賃や商品価格への影響についてはさまざまな見方がある。航空会社の場合、もともと満席にできる需要がない時期だから空席確保を打ち出せた面がある。実際に同様の措置を打ち出した多くの航空会社が7月前に終了しているのもそのためだろう。しかし、一方で継続を決めたDLは、「今はまず安心・安全が前提。お客さまも安心・安全を判断して当社を利用してくれており、今は現状の料金のまま販売を続ける。逆にいうと安心・安全をデルタの1つのブランド価値として考えている」(大隅ヴィクター日本支社長)と説明。空席確保を運賃に転嫁するのではなく、ブランド価値向上策の原動力とする戦略だ。

 一方、クラブツーリズムの新商品は、過去の同種の商品と比較してみると貸切バスのコスト上昇の一部が反映された価格設定と考えられるが、「自治体と協力し、他で味わえないオリジナルなランチを組み込むなど行程・内容で工夫を凝らしており、価格に見合った付加価値を提供している」(広報)と単純な価格転嫁は否定する。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年8月10日号で】

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