コロナ時代のMICE キーワードから探る変化

2020.07.27 00:00

(C)iStock.com/skynesher

新型コロナウイルスがビジネス全般に暗い影を落とすなか、東京五輪の開催延期も重なり、二重、三重の苦難に直面しているのがMICE業界だ。観光産業のなかでも成長が期待される分野だが、コロナ禍で環境は激変している。現状と課題を踏まえつつ、コロナ時代のMICEの変化とあるべき姿を探る。

 「これまでとは比べものにならない惨状」。MICE業界が置かれた現状について、関連事業者約240社が加盟する日本コンベンション協会(JCMA)の近浪弘武代表理事(日本コンベンションサービス代表取締役社長)はこう表現する。MICE業界は過去にもSARS(重症急性呼吸器症候群)やリーマンショック、東日本大震災といった数々の危機を乗り越えてきた。2月26日の首相発言による大規模イベントの開催自粛要請を契機に3月のMICE案件が大小を問わずほとんど中止か延期となり、3月末ごろには近浪代表理事も東日本大震災と同程度の影響を覚悟。ただし、そこまでは過去の経験値で何とか乗り越えられると考えてもいたという。

 しかし、時間が経つにつれ状況は一段と悪化し、認識を変えざるを得なくなった。過去最悪と判断するのは、ワクチンや特効薬が開発され普及するのに2~3年は必要とされ、それまでは根本的な解決の糸口が見えず、影響が世界的な規模で長期にわたるからだ。

 JCMAが実施した会員へのアンケート調査では、本来繁忙期である3月の売り上げがほぼ消失したうえ、すでに手配済みだった印刷やウェブサイト作成等の開催準備関連の経費も重くのしかかっている実態が浮き彫りになった。さらに東京五輪の延期決定に伴い、21年に予約済みのMICE案件の一部が開催場所や時期の変更を迫られ、場合によっては中止に追い込まれることが多くの事業者にとって懸念材料となっている。

 緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針におけるイベント開催制限の段階的緩和の目安によれば、屋内会場における人数上限は6月19日以降、それまでの100人から1000人に緩和され、7月10日にはさらに5000人に引き上げられた。8月1日をめどに上限が撤廃されるが、一方で収容率は50%以内の制限が続く。イベント開催ができても長期間にわたる規模縮小は避けられない。

 東京五輪の延期は、とりわけMICEの「E」、つまり展示会関連事業者の業績に深刻な影を落とす。日本展示会協会(日展協)は、東京五輪のプレス報道センターとして使われる東京ビッグサイトが20年12月から21年11月までの12カ月間、利用制限された場合、影響を受ける出展社や支援企業は約5万社、売り上げ損失は約1.5兆円に及ぶと試算する。展示会はすでに19年4月から20年11月まで延べ20カ月にわたり利用が制限されており、主催者・支援企業・出展者合わせて8万3000社以上が約2.5兆円の売り上げを失うものとみられる。これに五輪延期の影響が加われば、約4兆円ものダメージを被ることになるという。

 展示会業界は東京五輪開催の影響と新型コロナウイルスというダブルパンチを受けていたところに五輪の延期開催が加わり、同協会はトリプルパンチを受けていると訴える。MICE業界はいま、まさに二重苦、三重苦を強いられている。

政府・行政に支援要望

 こうした事態を受けて、MICE業界は行政に積極的関与と支援を働きかけている。JCMAは6月3日、コロナ禍後の「JAPAN MICE is BACK」のための緊急提言をとりまとめ、観光庁と首相官邸に提出した。内容は「5本の矢」で構成される。具体的には、①開催ガイドラインに対する国の積極的かつ主体的な関与、②GoToMICEキャンペーンの実施、③主催者のMICE開催意欲の喚起、④V字回復戦略、⑤東京五輪延期による影響ゼロ化だ。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年7月27日号で】

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