ANA、旅の効用を科学的に立証へ 次世代教育活用に向け協議会発足

2020.06.29 00:00

大下ディレクター。学ぶために旅することが当たり前の価値観にしたいと語る

 ANAホールディングス(ANAHD)はこれまで漠然と捉えられていた旅の効用を科学的に立証するプロジェクトに乗り出した。「旅と学びの協議会」を設立し、観光学や教育工学、幸福学の観点から人間の成長を促すエビデンスを示す。現代版「かわいい子には旅をさせよ」のムーブメントを醸成し、新たな学びの旅の価値観を広めたい考えだ。

 イノベーション創出を組織のミッションとするデジタル・デザイン・ラボが手掛ける。協議会は立命館アジア太平洋大学(APU)の出口治明学長が代表理事を務め、各学術分野の有識者をコアメンバーにそろえた。立証に向けては、高校生が地方を旅して学ぶ同社の実践型教育プログラム「イノ旅」の実データを活用するほか、研究・教育機関と組んで移動距離と人の成長との関係性を研究する。具体的な検証項目や手法は今後詰めるが、旅の前後など局面ごとの心の変化も調べる。

 プロジェクトを率いる大下眞央ディレクターは、「先の読めない時代には問題解決力や多様な価値観を受容する力が求められる。居心地のいい日常の中では得られにくく、移動距離が長い、すなわち旅の回数が多い人ほど、身に付きやすいという仮説を立てた」と着想の原点を語る。

 折しもコロナ禍で変化への対応の必要性が高まり、輸送ビジネスに照らせば、移動の価値が変化している。「若者など新たな客層にアプローチでき、需要の掘り起こしにつながる。関係人口の創出や地域の魅力にも結び付く」(同)とシナジーを見込む。

 企業や自治体などに広く参画を呼びかけていく。一般参加型の勉強会も定期開催し、認知度と世間の支持獲得にも取り組む。

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