『映像研には手を出すな!』(1〜5巻) ほとばしる情熱が大人の胸も熱くする

2020.06.29 00:00

大童澄瞳著/小学館刊/591円+税

 相変わらずしょんぼりするニュースばかりで、コロナ禍は持久戦の様相。ともすれば下を向きがちな日々……。

 そんなあなたに!オススメしたいのが近ごろ話題のこちらのマンガ。

 主人公は3人の女子高生。想像力が人一倍豊かだが引っ込み思案な浅草みどりはアニメ製作をやりたいけれど実行に移せない。だが、同級生のモデル、水崎ツバメがアニメーター志望と知り、アニメに興味はないが金もうけが得意な金森さやかと協力し「映像研」を立ち上げる。部員は3人、部室はおんぼろで機材もない。だが、彼らはへっちゃらだ。思い描く「最強の世界」で冒険すべく全力で走りはじめる……。

 女子高生のマンガなんて大人にはわからん、と思うかもしれない。だが、この作品、働く大人からの支持がとっても多いのだ。理由は3人のキャラクターとそれを存分に生かした物語展開。1人で電車にも乗れない気弱な浅草だが、想像力と設定力は最強。空飛ぶスカートも地下に住む怪物も個人用戦車も、見た物をはじから物語に仕立て上げる。水崎は美人で金持ちなお嬢さまだが、そんなことより作画第一。金森はクールに、時に熱く、敵をつくろうがなんだろうが自分の哲学に従い映像研を前に進めていく。

 随所に飛び出る台詞もかっこいい。「あんたがダメだと思うからこの作品はダメなんですよ」「誰も知らねえ店に、客が来るわきゃねえんだ」。人はやりたいことを信じるべきだし、でも、それだけじゃダメ。3人とも普通の基準でいうと欠陥人間なのかもしれないが、やりたいことに賭ける情熱や信念は、仕事との関係にも通じるものがあり大人の胸も熱くする。毎回挿入される浅草氏の妄想上の設定の面白さも読みどころの、パワフルなコミックだ。

山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。

関連キーワード