原優二のコロナ奮闘記vol.12 日本に技術はあるのだから政治決断でPCR検査拡大を!

2020.06.15 14:40

 ベトナムへ6月末にも日本から250人乗せてチャーター機が飛びそうだ。先週、これが実現しそうだと聞いた時はもっと先の話だと思っていたので驚いたが、ビジネス関係が中心とはいうものの、これで1つ風穴が開いた。これが実績となり、いや応なしにPCR検査が拡充されれば観光目的の往来も可能になるだろう。

4カ国と夏にも業務渡航を再開!

 政府はベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国と夏にも業務渡航を再開させるという。当面は1日最大250人程度。内訳は、ベトナム80人、タイ60人、オーストラリア50人、ニュージーランド10人、4カ国から帰国する日本人を50人と想定。日本からの出国者数も同水準になる見込みだ。14日間の自主隔離を求めない代わりに、PCR検査を実施し陰性なら行動計画書を提出させ入国。公共交通機関は使わせない。接触確認アプリの利用も要請する。まだ、交渉段階で内容は変更されるかもしれないが、なかなか厳しい。

 また、出入国時に実施するPCR検査の能力次第で人数を増やすことや、将来的には唾液を使ったPCR検査を採用し、往来が増えれば出入国者のみを検査する「PCRセンター(仮)」も設けるとも報道された。やっと検査を増やす方向に一歩踏み出した。

空港検疫でのPCR検査能力向上がカギ

 厚生労働省によれば、6月13日時点の空港検疫での累積PCR検査数は5万6148人である。1月28日に指定感染症に指定されて6月13日までに138日たっているので単純計算で1日406人である。もちろん、1日の検査能力はもっとあるだろうが1000人程度ではなかろうか。

 現在、PCR検査を必須としている111の入国拒否国は、7月1日から感染拡大が続く国々や、まだ十分には収まっていない国々に大幅に絞り込まれるだろう。そうすれば、多少は4カ国からの250人の出入国者にPCR検査を回せることになる。それでも微々たるものだ。どう考えても、PCR検査数を飛躍的に増やさない限り、人数の拡大も、第2弾の米中韓も見えてはこない。

 グアムや台湾、欧州市場が開こうが、日本が開かない限り往来は再開されないのだ。それとも、グアムだけは例外で観光目的の往来が再開されるのだろうか。私には情報がなくてわからないが、そんな例外は大歓迎である。

PCR検査能力向上は可能か?

 キヤノンメディカルシステムズは自社のホームページで6月9日、LAMP法を用い、新型コロナウイルスRNA検出試薬を使った唾液での検査の精度を調べたところ、10分程度で検出できることが確認され、従来の鼻咽頭拭い液と遜色ない結果を得ることができたことを発表した。これなら空港の検疫に使えるし、あらゆる場面での利用希望が殺到するに違いない。

 また、6月10日、タカラバイオの米子会社などが、約2時間で最大5000件以上のPCR検査を可能にする手法を開発し、6月中にも米国で承認を受け早期に提供を開始するというニュースが流れた。しかし、日本で展開する予定はないという。せっかく技術はあるのに、日本は検査を増やさないから市場として魅力がなく、会社が投資しないということなのか。なんとかならないものだろうか。

 以前から、フランスやイタリアで使われているロシュ社の全自動PCR検査システムにもプレシジョン・システム・サイエンスの技術が使われている。富士フイルムもすでに75分で結果が出るPCR検査試薬を開発しているし、島津製作所も開発を進めているという。

 技術はある。後は政治的な決断で集中的に資金を投じて前へと押し進めるだけだ。政府はぜひ、その方向へ大きく舵を切ってほしい。そうすれば、オリンピックも見えてくる。

さて、これからどうする

 オリンピックの前に第2波、第3波は絶対に起こさない。そのためには、海外との往来は極めて限定的に、というのが国の方針のようだ。上記のような動きもあり、決して希望は捨てないが、いまのところ、PCR検査なしで海外との往来が認められることはないだろう。したがって、そう簡単には秋以降、観光目的の海外旅行が再開するとはいえなくなってきたように思う。

 だとしたら、どうやって会社を継続させるのか。この重い扉がいつ開いてもすぐ対応できるよう準備しておくのが理想だが、結果、実らなければかかった経費は無駄になる。9月までは雇用調整助成金の特例が伸びたからいいが、その後は分からない。さあ、これからどうする。思案のしどころである。

原優二●風の旅行社代表取締役社長。1956年生まれ。東京都職員、アクロス・トラベラーズ・ビューローなどを経て、91年に風の旅行社を設立し現職。2012年からJATA理事、16年から旅行産業経営塾塾長を務める。

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