Travel Journal Online

旅の衛生管理 安心・安全を旅行者に

2020年6月15日 12:00 AM

衛生管理のニューノーマルが必要
(C)iStock.com/elenaleonova

新型コロナウイルス感染症の終息はまだ見えてこない。ツーリズム産業は旅行者の安心・安全を担保しながら需要回復を図っていかねばならない。コロナ禍以前とは違う旅行者の行動原理や新たな生活様式を踏まえつつ、衛生管理のニューノーマルをつくる必要に迫られている。

 新型コロナウイルスによって最も深刻な事態を経験した国の1つであるスペインは5月23日、外国人観光客の受け入れを7月から再開すると発表した。これを受けてスペイン政府観光局は、観光消費額がアジアで最も多い日本人観光客の誘致に向け、日本の旅行業界に商品造成の期待を示した。スペインの発表は、それに先立つ5月13日に欧州委員会(EC)が旅行と観光の段階的な制限緩和に向けたガイドラインを発表したことが背景にある。ガイドラインは感染予防策を尊重しながら、欧州連合(EU)域内外の往来を含む旅行制限を徐々に解除し観光事業を再開できるようにするために、必要な措置をパッケージで示している。

 米国では、USトラベルアソシエーション(全米旅行産業協会)が米国疾病予防管理センター(CDC)とホワイトハウスのガイドラインに基づくツーリズム産業向けのガイダンスを発表。将来的に予想し得る新たなパンデミックへの対応も含めた指針として位置づけ、感染拡大防止策、消毒や検査の徹底、飲食提供の方法などを定めた。

 これらの指針は、ウイルス感染を念頭に置いた新たな衛生管理基準を重視しつつ、旅行者の安全を担保するための基準だ。他方、旅行者により安心感を与えるための取り組みでは、認証制度の導入も広がりを見せている。

 欧州でいち早く動いたのがポルトガルだ。4月24日、ポルトガル政府観光局が感染症予防と管理の衛生条件を満たす観光業者を保証する「クリーン&セーフ認証」スタンプの発行を開始した。ポルトガル保健省が示した基準をクリアすることが前提となる。有効期間は1年間で、5月中旬時点ですでに4000以上の観光関連企業が認証を取得している。

 トルコ文化観光省は今夏から「ヘルシー・ツーリズム(健康旅行)認証」プログラムを開始する。交通機関、宿泊施設、飲食施設を対象に、健康と衛生の両面で良好な環境を確保するための高度な要件を満たした場合、国際機関が認証書を事業者に付与する枠組み。6月以降、文化観光省のホームページなどを通じて認証施設を掲載する。

 アジアでも、観光を主要産業と位置づける国の取り組みが進む。シンガポールは衛生基準を高めて公共エリアの清潔度を保つことを目的に「SG クリーン」キャンペーンを2月に開始。観光地や会議施設、屋台、マーケットなども対象で、SG クリーン・マネージャーを任命し、毎日の徹底した消毒、スクリーニングのプロセスの実施、予防措置を順守する施設を認証する。

 タイ国政府観光庁(TAT)も新たな衛生安全基準「アメージング・タイランド・セーフティー&ヘルス・アドミニストレーション(SHA)」を導入し、基準を満たした事業者に認証を与える制度を5月25日付で立ち上げた。輸送機関や宿泊施設から小売業、飲食業、スパ、ウエルネスなど幅広い事業者が対象。すでに70社以上が取得済みで、TAT 発行のロゴを表示できる。有効期間は2年。違反が報告されれば認証を取り消す規定も設けた。

日本では場面ごとの指針も

 衛生管理の新たな基準づくりは日本でも始まっている。政府は5月4日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で社会経済活動の再開と感染拡大の予防を両立していく方法を議論し、業界団体等が主体となって業種ごとの感染拡大予防のガイドラインを作成し、業界を挙げて普及・実践することを強く求めた。業種によって感染リスクが異なるためで、観光関連分野では5月中旬までに旅行、航空、鉄道、宿泊、旅客船、バス、タクシー、小売り、外食の各ガイドラインが出そろった。いずれも従業員の健康管理や人との接触を避ける通勤・勤務体制をはじめ、接客時の接触・飛沫による感染を避けるための対策、運営施設の衛生管理の基本原則などが盛り込まれた。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年6月15日号で】[1]

Endnotes:
  1. 【続きは週刊トラベルジャーナル20年6月15日号で】: https://www.tjnet.co.jp/2020/06/14/contents-37/