DMO選別の時代 登録基準厳格化で底上げへ
2020.05.25 00:00
観光地域づくりの司令塔役が期待されるDMO(観光地域づくり法人)。日本版DMO登録制度は創設5年目を迎えたが、地域の観光における評価は定まっていない。観光庁はDMOの底上げに向け、登録制度見直しに踏み切った。
国際観光客の争奪競争で世界と渡り合うには、地域が主体的に観光振興に取り組みつつ、観光効果を地域で受益する仕組み作りが欠かせない。そこで注目されたのが、欧米の観光業界に根付いているDMO(Destination Management/Marketing Organization)だ。観光庁は日本へのDMO導入の検討を重ね、15年12月に日本版DMO登録制度の運用を開始した。16年発表の「明日の日本を支える観光ビジョン」では、20年までに世界水準のDMOを全国で100組織形成する目標が掲げられ各地域でのDMO創設が進んだ。
3月31日時点では全国で281団体が日本版DMOおよび候補法人として登録されDMOの重要性への理解も進んだ。しかしDMOが担うべき役割について戸惑う声や組織のあり方に疑問を投げかける意見も少なくない。
観光地域づくりのステークホルダーの一角を成す各地域の商工会議所に対して、日本商工会議所がアンケートを実施した。それによると「地域での観光振興を推進する機関」として地域DMOを挙げた回答は17.1%。広域連携DMOの12.5%を合わせても3割に届かなかった。まだまだDMOが地域に根付いているとは言い難い。
昨年11月の行政レビューではDMOの役割に関連して、本来重視すべきはずの地域におけるコンテンツ作りや受け入れ環境整備の取り組みが十分なされていないと指摘された。むしろ調査やブランディング、情報発信・PRがDMOの取り組みの主体になっており、観光庁の補助事業の予算を見てもコンテンツ・環境整備関連への配分は2割程度にとどまり少なすぎるという指摘だ。
評価者からは日本の3倍の観光客が訪れる米国でさえDMO数が350にとどまることを挙げ、「日本に200は多すぎる」との意見もあった。
世界水準のDMOへ検討
観光庁も日本版DMOの課題を認識しており、18年に「世界水準のDMOのあり方に関する検討会」を設置。調査と議論を重ね19年3月に中間とりまとめを発表。その中でDMOの目的・役割が必ずしも明確でないことや組織・財源・人材に改善の余地があることなどが指摘された。
目的・役割については、国、日本政府観光局(JNTO)、各層DMO、自治体の役割分担が不明確な結果、取り組みの重複がみられるとした。地域における観光施策の意義や達成へ向けた取り組みに自治体との役割認識が共有されていない。結果的に観光資源の磨き上げや着地整備の取り組みが十分になされないまま情報発信に偏った取り組みが行われていることが課題とされた。
組織・財源・人材については、DMOの意思決定の仕組みに地域の関係者の参画が確保されていないとしたほか、多くのDMOが安定的かつ多様な財源の確保に課題を抱え、出向者中心の組織のため専門的スキルの蓄積や人脈の継承が困難であることが指摘された。そのうえで課題を改善するための方向性が示され、中間とりまとめはDMO底上げのためのガイドライン作成を求めた。
新たなガイドラインを公表
観光庁は中間とりまとめで示された課題や行政レビューの指摘を踏まえ、新たに「観光地域づくり法人の登録制度に関するガイドライン」を作成し、4月15日に施行した。DMOの役割として強調されたのは地域の観光資源の磨き上げや受け入れ環境整備を重視する姿勢だ。
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