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観光地域づくり法人の激白 DMOアンケートから②広域連携DMO・地域DMO

2020年5月25日 12:00 AM

トラベルジャーナルが全国のDMO(観光地域づくり法人)に実施したDMO登録基準見直しについてのアンケートから、自由記述欄の回答を紹介する。アンケートの結果は週刊トラベルジャーナル20年5月25日号[1]で。

広域連携DMO

 「観光地域づくり法人の果たすべき役割は重要かつ期待度は極めて高く、地域経済の繁栄、活性化に資する組織として役割を担う一方、有事の際の自主財源の不安定性など大きな課題がある。役割に相当する持続可能な組織体制、基金をもつなどの財政的な基盤づくり、組織強化が必要」

 「地域の行政・事業者も含む幅広い方々にDMOのことを認識いただくことの必要性と重要性」

 「エリア内外を問わず他の広域DMOと活動を共有する場があれば、他の広域DMOの活動を参考にしたり、何かしらの連携等ができるのではないか」

 「地域の事業継続意思に関係なく国の制度変更や補助金スキームの変更がある。また、求められる観光地域づくりの関係者の役割分担と国の支援制度の補助対象者にミスマッチがある。今回のガイドライン制定を機に、DMOに関する継続した国の制度や補助金スキームの整備を国にはお願いしたい」

 「地域の観光の要である広域連携DMOはJNTO(運営費交付金)や観光庁・地方運輸局(税金)と異なり、財源に課題がある」

地域DMO

 「観光業(特に個人旅行客相手の旅行業)は利益を出しづらいことを実感している。もし儲かるのであれば、民間ですでにやっているはずである。DMOはやはり、地域民間事業者の利益を優先しながら、地域全体に観光のお金が還流するよう、データ分析と受け入れ態勢の整備、地域全体のプロモーション活動など公益的な事業が中心となっていく。体験型観光商品もそれら単体で収益を上げるというよりは、地域宿泊業や周辺飲食業をサポートするための宣伝的な意味合いで実施というのが実情だ。一方で体験型観光商品は観光客が深く地域との関わりを持つきっかけとしての可能性を内包しており、ネット通販やふるさと納税など物販といったタビアト消費のほか、地域住民との交流からの人を資源としたリピーター施策といった役割をもっている。地域観光による経済循環施策という意味では体験型観光商品は需要な施策の一部である」

 「DMOの主軸がインバウンド施策に重点を置いているため、活用できる国の支援制度が限られている。国内需要も見据えたロングステイ、リピーターの確保につながる重点事業を検討していきたい」

 「国のDMO向け補助事業は突発的かつ締め切りが早い事業が多い。また、インバウンド向けの施策が大半なので利用しづらい」

 「観光庁や管轄運輸局への提出文書や連絡事項が多く、事務の手間が少しでも簡潔化できればと望む」

 「行政主導ではわがこととして稼ぐことが難しい面がある。言われてするのではやらされ感しかない」

 「自然災害や今回の新型コロナウイルス問題など外的要因による観光需要の変動が目立つようになっているので、登録DMOとしてある程度長期的に仕事を進めるとともに緊急時の修正能力を身につける必要性を強く感じる」

 「当社の場合、行政資本率が24%以下の株式会社ということもあり、何をもってのDMOなのか、補助金を取ることがDMOなのかということについては日々考えさせられる。海外の事例を多くみると、DMO自体に大きな収益源があり投資した分だけ自分たちに還元されるという認識があるにもかかわらず、日本のDMOの議論の中で収益化は本来の目標ではないといわれるとDMOの正しい方向性がわからなくなる。また、地域の場合はプレイヤーが少ないため、次世代を作ることの難しさを感じる」

 「利益を上げていく観光ビジネスの面と地域連携(地域づくり)の両立、バランスをとるのが難しい」
 
 「DMO登録団体の全体について、DMO登録によるメリット・デメリットやDMO登録以前との違い、効果など実態が知りたい」

 「地域DMOはその組織の規模・人数などから、また1つの行動範囲が対象ということから広域や理域連携DMOとは明らかに違う。求められること、できること、予算規模など、条件も変わるべきと考える」

Endnotes:
  1. 週刊トラベルジャーナル20年5月25日号: https://www.tjnet.co.jp/2020/05/24/contents-34/