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原優二のコロナ奮闘記vol.9 やっと海外旅行再開の道筋が見えてきた!

2020年5月19日 6:30 PM

 5月17日の朝日新聞デジタル「コロナ、1週間で感染リスクなし?隔離2週間は必要か」という記事を読んで、1月にコロナ禍が始まって以来、初めて光明が見えてきたと感じている。また、韓国政府が調査の結果、再陽性と判定された人が、他の人を感染させる恐れはないとの見解を示したことももろ手を挙げて喜び勇んだ。大きな不安が消えたのだ。やっと、海外旅行再開への道筋が見えてきたような気する。そこで2日続きだが、奮闘記を書いた。

 台湾で、新型コロナウイルス感染の確定診断がついた100人に濃厚接触した2761人に、濃厚接触者が最初に患者に接触した時期と、感染の有無との関係についての研究結果が出た。2761人のうち、二次感染したのは22人(0.7%)。うち10人は患者に症状が出る前の接触歴があり、9人は症状が出た日から3日以内、3人は4日目あるいは5日目だった。すなわち、発熱やせきなどの症状が現れて6日目以降に接触しても感染することはなかったというのだ。台湾は隔離政策を転換し、発症後1週間経過して病状悪化の恐れがなければ隔離する必要はないとして、自宅療養を勧めることにした。(朝日新聞デジタル5月17日から要約) 

 2週間の隔離がなくなったことだけでも凄い話だが、この話を聞いてウイルスの姿が少し見えてきたような気がする。どこにウイルスがいるかと、ただやみくもに怖がるのでなく、症状が出た人はもちろんだが、無症状感染者を検査で発見して隔離すればいい。これを徹底すれば安心して街を歩けるようになるはずだ。

 初めからそうすればよかったという人もいるだろうが、いままでは感染者は2週間隔離しないと人に感染させると考えられてきたが、それとて明確に理由がわかっていなかった。この研究によって、隔離は1週間でよく、症状がなくなればPCR検査をしなくてもいいという。これで検査する的がぐっと絞れることになった。

 5月18日に韓国政府は再陽性と診断された285人と接触した790人を調査した結果、他の感染源が考えられる3人を除いて感染は確認されなかったと発表。新型コロナウイルスに感染し陰性となった後、再び陽性と判定された人について、他の人を感染させる恐れはないとの見解を示し、再陽性とされた人への対応指針を19日から変更し、隔離や再検査の必要はないとした。なんという素早い決断力だ。

 もちろん、これは台湾や韓国の話であって、日本がこうした方法に踏み切るまでにはまだまだ時間がかかるだろう。

 折しも厚生労働省は5月13日、抗原検査キットを承認した。無症状感染者を発見するためには検査を増やすしかない。いまずぐ家で簡単に検査ができるわけではないが、渋谷健司氏(WHO事務局長上級顧問)は、唾液を使って自宅でも検査できるようになるといっている。期待したい。

 そして、感染者の発見が徹底されれば、健康証明書の発行が可能になるのではなかろうか。いきなり世界標準はできなくとも、2国間でまず始めて実績を積めば、国を越えた往来を再開する道筋が見えてくる。私は昨日まで、新しい生活様式やガイドライン順守の先に、どうしても海外旅行再開を描くことができなかったが、これならワクチンを待たずとも再開の可能性はあると思えてきた。

 もちろん、イタリアのように必要に迫られて旅行を再開する国もあるが、日本の場合、人の命と引き換えに旅行再開はありえないだろう。6月から予約受付を再開し、秋や年末年始のツアーを販売しても、第2波が来て実を結ばなければ本当の経営危機に陥ってしまう。

 それならば、健康証明書発行は手間もかかるし海外に行ける人を限定するから市場を狭めるかもしれないが、旅行を再開しかつ持続可能にしていく方法になると思う。もちろん、実現は簡単ではないが、旅行業界を挙げて国に実行を迫っていくべきだと思う。皆さんはいかが思われるだろうか。

原優二●風の旅行社代表取締役社長。1956年生まれ。東京都職員、アクロス・トラベラーズ・ビューローなどを経て、91年に風の旅行社を設立し現職。2012年からJATA理事、16年から旅行産業経営塾塾長を務める。