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コロナ引き金にホテル・旅館の倒産加速 特需依存の急成長にもろさ

2020年5月4日 12:00 AM

 新型コロナウイルスによる需要急減が引き金となり、倒産に追い込まれる宿泊施設が加速度的に増えている。東京商工リサーチ(TSR)によると、2月25日に破産申請を行った冨士見荘(愛知県蒲郡市)を皮切りに、4月28日までのわずか2カ月で新型ウイルス関連の経営破綻は全国で105件に上り、宿泊業が分野別最多の22件を占めた。訪日市場や東京五輪の特需を当て込んで急拡大してきた事業者も目立ち、経営基盤のもろさが浮き彫りになった。

 注目を集めたのがファーストキャビンだ。4月24日、関連4社とともに東京地裁に破産を申請した。負債総額は11億3082万円。同社は空きビル活用策としてフランチャイズ事業を着想。洗練されたカプセルホテルが訪日客にも受け、大阪や京都、羽田空港など約25軒まで拡大していた。19年3月期は約17億円を売り上げたが、供給増や競争激化から2期連続赤字となり、新型ウイルスが追い打ちをかけた。5軒の営業を終了し、その他はオーナーの判断で営業を再開する。

 負債総額が最大の約160億円に上ったのがWBFホテル&リゾーツ。4月27日、大阪地裁に民事再生法の適用を申請した。オンライン旅行販売事業を手掛けるホワイト・ベアーファミリーが訪日需要を取り込み業容を拡大するなかで、グループ会社として2009年に創業。北海道や沖縄でホテルを運営し、19年3月期は約48億円を売り上げた。ただ、ホテル開設にかかる多額の資金を銀行借入金に頼っており、金利負担が重く、返済条件緩和の調整を行っていたところ、新型ウイルスで事業が行き詰まった。現在、複数企業が再建支援を申し出ている。

 倒産は4月以降、急増しており、全国各地に及んでいる。