クルーズ再開が待ち遠しい

2020.04.27 00:00

 世界は新型コロナウイルスのパンデミックに凍りついている。4月初めの英フィナンシャルタイムズは、この環境でも明るい日は遠くないと思っている2つのグループがあると紹介した。

 それは船旅再開を待ち望むクルーズ愛好家とリスクのある会社に対する社債投資家グループだ。クルーズ会社は息も絶え絶えの状況だが、顧客の方は極めて冷静だ。彼らは間もなく、広い海の上でワインを飲みながらクルーズを楽しむつもりだろう。しかし以前、第3四半期になれば景気は急回復すると予言していた楽観的なエコノミストも、今ではウイルス検査と治療に大きな革命的進歩がなければ、通常の状態に戻るまでには1年以上かかると言っている。人々はロックダウン、会社はシャットダウン、世界経済の先行きは分からないのだ。

 新型ウイルスで最も打撃を受けた会社は、世界最大のクルーズ船数と旅客数を誇るカーニバル社だろう。まずダイヤモンド・プリンセスが横浜で検疫を受け多くの船客が新型ウイルスに感染したことが分かり、10人以上が亡くなった。

 サンフランシスコ沖ではグランド・プリンセスの多くの船客と乗組員が感染し、数人が死亡した。さらに感染はコスタ・ルミノーザなど6隻に広がった。これら数隻は各地で寄港を拒否され海上に置かれたままで、残りの船の運航をすべて中止した。同社は予約を取り消した旅客に、払い戻しを諦めて次のクルーズを予約するよう案内している。

 5月31日まで予約を保持すれば、200ドルのバウチャーを提供する。それは現金同様に船上の買い物、飲みもの、エクスカーションに利用できる。もし多くが現金の払い戻しを要求すれば、多額の資金流出を余儀なくされるだろう。

 一方、カーニバルの再起に賭ける多くの投資家がいる。4月、同社は60億ドルを投資家から募ることに成功した。業界内の競争も激しく、カーニバルの株価は95%下がった。その投資家には年11.5%のクーポンを提供しなければならなくなった。3月にライバルのノルウェージャンクルーズが指摘したように、新型ウイルスはクルーズ旅行全体に対する消費者心理に悪影響を与えている。

 それでも投資家はパンデミックの影響を短期的に捉え、クルーズ愛好者は感染症の恐怖が脳裏にないようだ。英国のサガはパーソナル・エクスペリエンスを売りに50歳以上をターゲットにして成功しており、最新の業界情報紙は顧客の変わらぬ冷静さを大きく取り上げた。

 同社が所有する2隻のクルーズ船(スピリット・オブ・ディスカバリー、スピリット・オブ・アドベンチャー)の3月の予約は86%と船室はほぼ満杯だ。英国政府による規制が終わるまで熱心にクルーズ継続を望んでいた顧客は、その約60%が直ちに再予約した。

 世界中がパンデミックで苦闘する中で通常時を上回るほど好調な予約状況は不思議に見える。同社CEOによると、多くの顧客が不確実な期間にも代金返却を求めず、この秋と来年初めに予定するクルーズをいつから再予約できるのかを尋ねてきたという。クルーズは中毒性があるらしい。本稿のとおり、世界にはクルーズ船就航の再開を待ち望む愛好家は多数いるのだろう。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。