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原優二のコロナ奮闘記vol.5

2020年4月24日 2:00 PM

 日本はオーバーシュート一歩手前で踏みとどまっているが、だらだらと感染者が増え続けており、何度目かの「この2週間が正念場」を迎えている。一方で先に流行が始まった中国、ベトナム、韓国などがロックダウンを解除し、経済活動を再開している。もちろん慎重にではあるが、市中のレストランも営業を始めているし、人の移動も一部で始まっている。なんだか、置いていかれたような気分になる。

 周知のとおり、米国で「職場に戻せ!経済活動再開!」を叫ぶデモが起きている。トランプ大統領も封鎖解除に積極的だ。ラスベガスのグッドマン市長は、ネバダ州が行った全州封鎖を「正気の沙汰でない」と批判し、「私は100%の市民が無症状の保菌者と想定している」とまで言い、すでにみんな感染しているから経済活動を再開しても問題ないと言い切っている。本当か、と耳を疑いたくなる。

 スウェーデンはソーシャルディスタンスをとりテレワークを勧めているものの、外出制限は一切行わず、学校も平常通り。規制は極めて緩い。一方、感染者数は4月22日現在1万5000人を超え、1500人以上死亡している。致死率は10%を超え、イタリアを追い抜いてしまった。福祉の国スウェーデンには似つかわしくないが、政府はあくまで個人の責任で生きるべきだとしている。

 たとえ死者が多数出ても、あくまで個人の責任が優先されるということなのかもしれない。スウェーデン政府はこのやり方なら3年でも続けられると豪語している。死ぬのも自己責任というわけだ。

 命かそれとも経済か。二者択一といった単純な問題ではないが、経済優先を叫ぶ人は自分が死ぬことは想定していないに違いない。自分が感染し命を落とすことになっても、これでよかったと言い切れるのか。ましてや、愛する家族が犠牲になったらどうだろう。これは古くからある命題である。正解があるわけではなく、どちらを選択するかの問題である。日本は曖昧模糊としているが、人命を優先させる姿勢は変わらないだろう。スウェーデンのような選択は受け入れられないに違いない。

 分かっていることは、たとえ緊急事態宣言が終わっても旅行の仕事がすぐに戻ってこないということだ。私の会社は仕事がないから臨時休業にしたというのが実態で、緊急事態宣言は口実に過ぎない。だから、5月6日以降も面子は捨てるつもりだ。

 先日、全米プロゴルフ協会(PGA)が専門家の助言を受け、2カ月で状況が大きく変わると判断して6月11日からの全米男子ゴルフツアーの再開日程を発表した。12月までほぼ毎週、ツアーを開催するという。条件として、ウイルス検査が全員に実施され、キャディーやツアー関係者は自宅を出る前に検査を受け、コースに着いてからも再度検査を受けられる態勢が整うことが挙げられている。

 たった2カ月でそれは無理だろうとは思うが、旅行会社も無理は承知でこういう方法を考えないといけない。収束を待っていたらこの産業は消えてしまう。

 いいニュースもある。雇用調整助成金の上限日額8330円は額が低すぎるなどの批判が与党内や企業から相次いでいることから、政府は助成金引き上げの検討に入った。与党内からは「上限を1万5000円まで引き上げるべき」などの声が出ていて、4月24日に自民党の雇用問題調査会が加藤勝信厚生労働相に対し、助成金の引き上げを求める。(TBSニュースより)

 JATA(日本旅行業協会)の越智良典事務局長と何度も雇用調整助成金について話し、上限の引き上げ、3年300日実現を与党に強く働きかけてもらうよう要望してきた。本当によく頑張ってくださっている。段々、コロナと戦う武器が揃ってきた。あと一押し頑張っていただきたい。

原優二●風の旅行社代表取締役社長。1956年生まれ。東京都職員、アクロス・トラベラーズ・ビューローなどを経て、91年に風の旅行社を設立し現職。2012年からJATA理事、16年から旅行産業経営塾塾長を務める。