新型コロナ禍に負けない　何ができるか、何をすべきか

2020年4月13日 12:00 AM

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。その勢いは地球上を覆いつくしつつあり、ツーリズムはかつてない危機に瀕している。瀬戸際に追い詰められるなか、観光産業はいま何かでき、何をすべきなのだろうか。

　中国湖北省の武漢市で新型コロナウイルスによる肺炎の発生が確認されてから約3カ月。当初は03年に発生した重症急性呼吸器症候群（SARS）と同程度の影響を及ぼすと警戒されたが、事態は最悪の想定をはるかに超えて悪化している。各国は日を追って入国制限を厳格化し、国民に外国への渡航中止を促す国も増加。日本も3月25日に不要不急の海外渡航の中止を求めるレベル2の感染症危険情報発出エリアを全世界に広げた。次第に世界中の人の動きが停止しつつある。

　IATA（国際航空運送協会）は新型肺炎が今年の世界の航空需要に与えるインパクトについて試算しているが、3月5日付の発表では加盟航空会社の旅客収入が年間に最大で1130億ドル、日本円にして12兆円近く減少し、年間旅客収入の19％が消えると報告した。ところが24日に発表された試算では、損失額は最大2520億ドルまで膨らむ可能性があるとし、年間旅客収入の44％が失われると修正している。3週間に満たない期間で損失予想額が2倍以上に跳ね上がってしまったわけだ。米国が欧州からの入国を禁じるなど、新たに航空輸送の大動脈を遮断する措置が取られたことも影響したようだ。新型肺炎の終息が見えないどころか、感染拡大の勢いが増している現状では、損失予想が今後さらに膨らむことも十分あり得る。

　世界のツーリズム産業はこれまで01年の米同時多発テロやSARS、リーマンショック（世界金融危機）、新型インフルエンザ、東日本大震災といった危機に直面してきたが、いずれも旅行需要への影響はある程度エリアが限定されたものだった。例外的にリーマンショックの影響は全世界的な規模だったものの、今回のように国境を閉ざして移動そのものを制限するような動きはなかった。現状はまさに未曽有の事態。「世界的なパンデミックで各国が越境移動の制限を急速に拡大したことで、もはや日本だけで判断したり対処したりできない複雑な状況になった」（日本政府観光局〔JNTO〕金子正志理事）のである。全世界が一斉に越境移動を制限し始めてしまったいま、制約が解除されないと元どおりの移動は復活しない。

生き延びる手立てを模索

　日本の観光産業も瀬戸際に立つ。JNTOによると、2月の訪日外客数（速報値）は前年同月比58.3％減。過去最大の下げ幅だった東日本大震災直後の11年4月の62.5％に次ぐ2番目で、3月以降に最大下げ幅を更新する可能性は極めて高い。

　旅行会社の売上高への影響も甚大だ。JATA（日本旅行業協会）は主要旅行会社10社からのヒアリングに基づき、予約は3月、4月とも前年同月に比べ70％程度減少している状況といい、5月、6月はさらなる悪化の可能性もあると見ている。減収額は主要50社だけで毎月3000億円相当と試算。旅行消費については「毎月1.5兆円の旅行消費が消えてしまっている非常事態だ」（越智良典理事・事務局長）との認識を示す。

　宿泊事業者や交通機関も同様に苦境に立たされている。観光庁のヒアリングによると、日本旅館協会の2月末時点の調査では40％以上のマイナスで、日本ホテル協会の3月の見通しは60％以上の落ち込みだという。また、航空会社の減収は2～4月の3カ月で3000億円、鉄道は2～5月の4カ月で4000億円以上に達する見込みだ。

　過去に観光産業を襲ったイベントリスクでは、必ずといっていいほど、「日本人は神経質で需要の戻りも遅い」「マスコミのあおりすぎによる風評被害」といった業界人の嘆きが聞かれたが、今回はそうした声がほとんど聞かれない。何が事態の核心なのかが見えず、前例がなく、見通しも立たないという事態の異常さの裏返しかもしれない。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年4月13日号で】[1]

【あわせて読みたい】新型コロナ禍　感染拡大の影響を訴える[2]

---