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クルーズ産業の活況が予想されたが

2020年4月13日 12:00 AM

 昨年12月のクルーズライン国際協会(CLIA)の会長メッセージは、20年の全世界での海洋クルーズ船客は過去最大の3200万人と予測し、業界として責任あるツーリズム遂行のために2つの取り組み課題を掲げた。1つは、持続可能な環境保全で、技術開発により国際海運の二酸化炭素排出を30年に08年比で40%まで削減する。もう1つは、オーバーツーリズム緩和のために地域・住民と連携してデスティネーションの健全管理を促進することである。

 1月のトラベルウイークリーは、今年のクルーズ産業のまれに見る活況を予測している。新船就航は24隻だが、その数以上に内容の多様性を評価している。最大の話題は、同じ産業の異なる分野、それも世界的知名度の企業による2つの新ブランド誕生である。4月に就航するヴァージングループのスカーレット・レディは11万トン、船客2770人(キャビンの93%はオーシャンビュー・テラス付き)の中型船で、船体は独特の赤い煙突などヴァージングループのイメージ、船長は女性である。

 「自由でシンプルなライフスタイル」をテーマに、ドレスコードは原則自由、船客は18歳以上限定、20のレストラン・バーなどさまざまな新機軸を提案し、計画発表以来、派手な宣伝と先行予約を受け付けている。21年に同型のヴァリアント・レディ、22~23年にも同じシリーズ船が就航する予定だ。

 もう1つは、超高級ホテルチェーンのリッツ・カールトンによる6月就航のエブリマである。2万6500トン、全室テラス付きスイート149、船客298人。飲料、チップ、Wi-Fi、アクティビティーなどオールインクルーシブ方式である。

 新船リストには多くの大型船が見られメガシップ信仰は健在だ。特に今年最大船としてカーニバルクルーズラインのマルディグラ(18万3900トン、5200人)が目立つ。船上にローラーコースター施設を設置。米国市場で初めて燃料として液化天然ガス(LNG)を採用する。大型船に傾注しているロイヤル・カリビアンに比べ、これまでカーニバルの最大船は13万3800トンのカーニバルパノラマで、大型船順位は44位であった。今後カーニバルが大型化に向かうのは確実とされる。

 さらに注目すべきは、極地やガラパゴス観光の小型探検船が10近く就航することだ。従来、床に固定されたベッドとトイレの上のシャワーだけという簡素な設備の探検船は30年を超える老朽船が多く、その割に高額であった。それでも、もともとファンだったベビーブーマー世代が年長となり、探検船にもそれなりの快適さを求めるようになったと専門家は解説する。

 クリスタルクルーズのクリスタル・エンデバー(2万5000トン、200人、オールスイート、レストラン6)は潜水艦やヘリコプターも備えた高級メガヨットだ。また、シルバーシー・クルーズのシルバー・オリジン(5800トン、100人、全スイート、バトラーサービス)はガラパゴス観光専用のエレガントな客船と称される。

 こうして、旅行会社にとっても最良の年と期待が高かったが、新型コロナウイルスが蔓延し、横浜で検疫中のクルーズ船から多数の感染者が発生する事態となった。アジアのみならず、今後のクルーズビジネス全体への影響が心配される。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。