原優二のコロナ奮闘記vol.2

2020.04.09 13:30

 4月7日に緊急事態宣言が出され4月8日から実施されると、大手旅行会社もこぞって5月6日まで臨時休業に入った。中小の旅行会社も大抵は臨時休業に入ったと思われる。

 まさか、こんな事態になろうとは信じられないことだが、これで旅行業界全体が1カ月止まってしまったといえよう。

  弊社は、すでに3月中旬から出勤できなくなることを予測し準備してきた。3月26日には、5月15日出発までのツアーを中止することをホームページで発表し該当するお客さまへの連絡・返金を急がせた。翌週の3月30日には準備が整ったので翌日から臨時休業に入ろうと思ったが、緊急事態宣言が出そうだというので様子を見ることにした。しかし、なかなか出なかったので一足先に4月2日のマネージャー会議で4月6日からの臨時休業を決めた。

 急ぎ、4月2日と3日の両日で、6月以降の予約をいただいているお客さまに、臨時休業が明ける5月7日・8日の2日間であらためてツアーの実施についてご連絡する旨メールや封書で連絡した。もちろん取消料がかからないよう配慮する旨も書き添えた。

 テレワークではなく原則全社員休業している。これを一時帰休というらしい。急な仕事があって出勤したら、当然だがタイムカードを打刻し勤務にするよう指示している。現場は仕事をしているほうが楽しいし心が休まる。だから休めといわないと会社に出てきてしまう。「今は仕事はしなくていい。休むことが仕事だ」。まるで経営者らしくないことを今は明確に言わなくてはならない。天から授かった思いがけない休業と思い、前向きに一生懸命休業に取り組んでくれと言っている。

 社員の副業も認めた。弊社のスタッフは自分で生きていく力があると信じている。漁師の手伝いや、ビルメインテナンスなどの仕事を始めたスタッフもいる。夜のバイトは厳禁。とにかく、罹患しないよう注意してくれとだけ言っている。

 今、旅行は海外、国内、インバウンド、すべてが止まっている。成田空港のホテルが帰国者の14日間の自主隔離のために混んでいて、その手配をしている部署だけが大忙しだとか、海外から戻りたいが航空路線が停止していて帰れない、何とかしてほしい。逆に中国へ行きたいが何とかならないか。そんな特殊な手配があるようだが、一般の旅行はすべて止まってしまった。いったい、いつ旅行ができるようになるのかまるで見えない。

 緊急事態宣言が出て、これから2週間、人との接触を80%減らせば次第に収まっていくとのこと。私には判断する材料が何もないので、これを信じるしかない。しかし、それでこの感染症が収束するわけではないということは分かってきた。医療崩壊を招かないよう感染者数を一定の範囲に止め、死者数を最小限に止める。これが日本のやり方だが、北海道のように、収まっても自粛を緩めれば、また広がり、第2波、第3波と続く。期待は治療薬と抗体検査。ワクチンはかなり時間がかかるようだ。

 犯人捜しや金にものを言わせた脅しは止めにして、何とか世界が協力して、有効な治療薬の実用化と抗体検査の水準の向上を図り、救いの神を到来させてほしいと思う。

原優二●風の旅行社代表取締役社長。1956年生まれ。東京都職員、アクロス・トラベラーズ・ビューローなどを経て、91年に風の旅行社を設立し現職。2012年からJATA理事、16年から旅行産業経営塾塾長を務める。

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