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ハワイ旅行市場、需要再燃を見据え準備

2020年4月6日 12:00 AM

日本人のハワイ旅行市場は19年にプラス成長を維持した。オアフ島への底堅い需要に加え、ハワイ島が18年の火山噴火の影響を克服しつつあるためだ。海外旅行は目下、新型コロナウイルスの感染拡大で世界的な自粛ムードに包まれているが、終息を見据え、人気方面であるハワイの販売強化に向けた準備がいまこそ必要となっている。

ワイキキビーチ © iStock.com/7maru

 19年のハワイ旅行市場は手堅く成長した。ハワイ州観光局(HTJ)による「発見ハワイ」プロモーションなどの成果もあり、訪ハワイ日本人旅行者数は12カ月中10カ月で前年を上回った。特に9月以降は4カ月連続で前年を大きく上回り、12月は9月と同様、年間を通じて最高となる7.3%増を記録。11月までの累計で3.4%の伸び率は最終的に3.8%まで拡大し、旅行者数も154万5806人となった。

 18年のキラウエア火山の噴火の影響で客足が滞ったハワイ島の復活も堅調を後押しした。HTJは人気ミュージシャンM-floとタイアップして新曲のミュージックビデオをハワイ島で撮影したほか、主要旅行会社と共同で SNSキャンペーン「#知りたいハワイ島」を実施。ハワイ島を盛り上げた。その結果、1月にハワイ島を訪れた日本人旅行者数は前年同月比37.4%の伸び。19年を振り返ると5月以降に伸びを見せ始め、12月には単月で1万7011人まで回復。年間でも16万8640人となり、前年との比較で4.5%減まで落ち込み幅を縮小した。この流れのなかで20年は好スタートを切ったといえる。

  20年の年明けからは中国を震源とする新型コロナウイルスの不安が徐々に世界に広がり始めたものの、太平洋の真ん中に浮かぶハワイでは感染症の心配は少なかった。日本でも旅行需要に明確な影響が出ることはなく客足は衰えず、1月の日本人旅行者数は12万8686人と前年を6.9%上回った。

商品に新たなトレンド

サーフィンのメッカであるノースショア

 HTJは今年、ハワイ生まれのスポーツであるサーフィンが東京五輪の競技種目に選ばれ注目を集めていることから、サーフィンを取り上げて各種プロモーションを行っていく方針だ。2月にはサーフィンを通してハワイ文化の啓蒙と環境保護を促進する方針を発表し、ハワイ州観光親善大使にプロサーファーでオリンピックのメダル獲得も期待される五十嵐カノア選手を起用。五十嵐選手のメッセージを収めた動画の配信も開始した。

 大手旅行会社の強化ポイントを見ると、「7~8月はファミリー。夏以降はハネムーン、シニア層にアピール」(日本旅行)という戦略が共通の特徴といえる。たとえば JTBはルック JTBの「ファミリーにうれしい」シリーズで子供代金半額、幼児100円、ベッド不使用子供代金の設定などで夏のファミリー需要の取り込みを強化する。その一方で、9月以降はハネムーンや未成年者を伴わないファミリーの需要の高まりに合わせて、ナイトラウンジをシェラトンワイキキ30階のレアヒ・クラブラウンジにオープンするなど、大人需要へのスムーズな移行を工夫している。

 HTJが推進する自然環境の保護や責任ある旅行者としての意識向上を図るレスポンシブル・ツーリズムの推進に連動し、長期的視野に立って未来のハワイ旅行をにらんだ取り組みを始める旅行会社もある。たとえば、レスポンシブル・ツーリズムを取り入れた旅行商品として、エイチ・アイ・エス(HIS)はハワイ島(ヒロ、コナ)周遊コースも検討しているという。また、KNT-CTホールディングスは販売店スタッフ対象の現地研修でレスポンシブル・ツーリズムに関する講習を実施した。日本の旅行会社による取り組みが今後さらに加速していくことが期待される。

ピンチをチャンスに変える

ワイキキビーチで大人気の専用ボードに立って、パドルで漕ぎながら波乗りを楽しめる
スタ ンドアップ・パドル・サーフィン(SUP)© Danny Sepkowski

 20年のハワイ方面には旅行業界の大きな期待が集まった。というのも羽田空港の国際線発着枠増枠に合わせて、航空会社各社が今夏スケジュールから羽田/ホノルル線の新規開設や増便を計画したからだ。増枠の配分を受けた計画を見ると、日本航空(JL)は羽田/ホノルル線に就航し週14便体制で運航するとし、デルタ航空(DL)も羽田/ホノルル線に週7便体制で就航、ハワイアン航空(HA)はホノルル線を1便増便といった内容だ。昨年、全日空(NH)の超大型機A380型のホノルル線就航で供給力が増大した日本/ハワイ間の航空座席だが、各社の計画からはハワイ人気の底堅さがうかがえる。もっとも、新型コロナウイルス対策で各社は計画の見合わせや地方発便の運休・減便などを余儀なくされているが、需要のリカバリー期での計画遂行が期待される。

  外務省は、3月25日、全世界への不要不急の海外運航を止めるよう求め、ハワイ州知事もハワイへの旅行を延期するよう要請したところだ。しかし、旅行業界はこの状況を逆手に取って、今後訪れる終息後の需要再熱期を見据え、この時期にこそ人気方面であるハワイの現地事情などの知識を身に付けておきたい。

写真提供/HTA