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コロナウイルスとフリークエントフライヤー

2020年4月6日 12:00 AM

 新型コロナウイルスの蔓延でビジネス旅行が世界中で急減しているが、多くの航空会社は高収益をもたらすフリークエントフライヤーの維持に奮闘している。航空会社はフリークエントフライヤーに上級会員資格を付与して、一定期間に支払われた代金に応じた各段階の特典を提供し自社へのロイヤルティ確保を期待する。しかし新型ウイルスのおかげで企業の旅行禁止(制限)措置が増え、フリークエントフライヤーはプレミアム運賃やホテル滞在で得られるロイヤルティポイントを集めることができない。支払いに利用されるクレジットカードから得られるポイントも失う。したがって航空会社は優良顧客維持のために、彼らが期待する権利が失われない保証を与えたいと考える。

 英フィナンシャルタイムズによると、シンガポール航空は最近、最上級顧客に1年ごとに更新するエリートステイタスを延長するメールを送った。これは企業が社員の出張を禁止しても、その企業の顧客は同航空のエリート飛行クラブの会員資格を失わないということだ。資格は主にファーストクラスを利用したマイル数によって与えられる。

 キャセイパシフィック航空はマルコポーロクラブのトップ3ランクの会員に、4月まで特別に報奨ポイントを提供することでエリートステイタスを維持する機会を増やすことにした。しかしデルタ航空、ルフトハンザ・ドイツ航空、ブリティッシュ・エアウェイズなど欧米航空会社はまだ追従していないので、エリートクラブ会員のビジネス顧客の中には無料のアップグレードやラウンジ利用の資格が4月に切れることを心配する人もいる。

 ヴァージンアトランティック航空は、自社ロイヤルティプログラムの方針を明らかにしていない。ブリティッシュエアのエクゼクティブ・クラブ・ゴールドの資格を持つフリークエントフライヤーは、予約の都度2倍のポイントを得られるようになった。豪華なファーストクラスラウンジと着陸後のマッサージなど優待サービスを受けられる。また、新たに予約綱領を打ち出し、3月16日より前の予約はすべて無料で延期またはルート変更を可能にした。これの不都合な点は、旅程を変えたフライトがより高額になると旅客は差額を払わなくてはならないこと、そして払い戻しができないことだ。ユナイテッド航空も3月初めに新型ウイルスによる混乱を心配する顧客のために、今後12カ月、予約したフライトを無料で変更できる方針を打ち出した。

 高い固定費と需要変動に左右される航空産業には、フリークエントフライヤーを優待するスキームは重要だ。彼らがビジネス旅行でよく利用するプレミアムエコノミーとビジネスクラスは最も利益を生む。ゴールドマンサックスやUBSを含む銀行は、重要でないビジネス旅行をすべて削減し、フェイスブックやグーグルなどハイテク企業はほとんど会議を取り消している。

 就航先も減りつつある航空会社にとって、現在、エリート資格を失う顧客を懸念するより自社の経営破綻を防ぐ施策が重要かもしれない。しかし今、エリート資格を失う心配をしているフリークエントフライヤーは、新型ウイルス騒ぎが収まった時に企業の中で旅行予算を確保して、旅行禁止が解けた時に最もお金を使ってくれる大切な顧客だ。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。