2020年3月30日 12:00 AM
ここ数年、ベルリンを扱った本やコミックが増えてきているような気がする。いやその、爆発的に増加、とかじゃなくて、『ねこと私とドイッチュラント』(小学館)、『ドイツ人が教えてくれた ストレスを溜めない生き方』(産業編集センター)など、ベルリンに暮らす日本人がその魅力を語る的な本が目立ってきた印象なのだ。
以前だったら、たとえばニューヨークがそういうことを語る舞台だったのが、ベルリンに移ってるのかなあ、それだけいまの時代に魅力的なんだろうな、どこが人を引きつけるのかな、なんてぼんやり思ったりもしている。
ってことで、今回はそのベルリン暮らしを描いたコミックエッセイの新刊をご紹介。
なんとなく訪れたベルリンで、街に漂う余裕や優しさに「ここ…もしかしたら最高の街なんじゃない?」とピンときて住み着いた著者。リサイクルなど合理的な仕組みに感心し、車椅子、ベビーカー、犬などの居場所がちゃんとある交通機関に「公共の場って、『その社会がどういう感じを目指しているか』が表れやすい」と語る。
特にすごいことをするわけでもなく、淡々と、ゆっくりとつむがれる日常。小さなことをきちんと受け止め考えていく著者の視点に助けられ、公園や居心地のいいカフェがいっぱいあって、多彩な人が暮らすベルリンの風通しのよさげな雰囲気が読者にも伝わってくる。人物が動物や不思議なカタチのものに描かれていたり、ちょっと独特な絵の表現方法も面白い。ベルリン、いいとこなんだなあ。
あくまでも旅が好きで、海外ロングステイにはあまり興味がないのだが、本書を読むと、暮らしてみないとわからないこともいっぱいあるんだな、なんて思わされる。素敵な本ですよ。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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