UNWTO、20年の国際旅行者4400万人減予測 経済回復策で「観光を優先項目に」

2020.03.16 00:00

 新型肺炎の感染が世界100カ国以上に広がり、渡航・入国制限を設ける地域が拡大している。 世界観光機関 (UNWTO)は20年の全世界の国際旅行者数の成長予想を1~3%減に下方修正した。人数ベースで1500万~4400万人の減少。マイナス成長はリーマンショックの09年以来で、アジアは9~12%減と大幅な落ち込みを余儀なくされる見通し。経済的ダメージの回復に向け、UNWTOは各国政府や国際機関に観光をリカバリー策の優先事項とすることを呼びかけている。

 19年に世界各地が海外から受け入れた宿泊を伴う国際旅行者は前年比3.8%増の14億6100万人。今年1月時点で20年は3~4%増と予想していた。

 予想する減少幅は09年の3700万人を上回る規模で、今後の動向次第ではさらに拡大する可能性も否めない。旅行者数の減少に伴い、20年の観光消費額も300億~500億ドル減と見通した。特に観光消費額の20%を占める中国市場の縮小による影響は甚大で、訪問先上位のタイ、日本、米国が受ける影響はとりわけ大きいと予測する。

 観光はいまや全世界の 国内総生産 (GDP)の10%を占める稼ぎ頭だ。経済成長の鍵である一方で、ズラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長は「観光産業の8割を中小企業が占め、ぜい弱なコミュニティーを含む何百万人もの生計を観光に依存している」と強調する。

 そこでUNWTOは経済回復策に観光への支援を含めること、さらには観光産業のリカバリー策への財政的・政治的支援への要望を表明した。また、 世界保健機関 (WHO)と密接に連携し、「観光イベントや見本市の主催者を含む観光分野の関係者に対し、回復策に関する指導とサポートを行う用意がある」などとしている。