欧州裁判所がエアビーアンドビーに有利な判決

2020.03.16 00:00

 世界の多くの都市で、既存業界からエアビーアンドビーの規制を求められている。昨年12月、欧州裁判所はエアビーの宿泊施設リスティング事業がフランスで不動産業法の適用対象でなく、情報社会サービス(業)であると判決した。これはギグエコノミーの大きな勝利として、特にIT社会で広く歓迎された。エアビーはこれで欧州における各種規制からより大きな自由を得て、各地の法廷で交渉力を強化できるだろう。これは2年前に欧州裁判所が、ライドシェアのウーバーを仲介サービス業者でなくタクシー事業者と認定した判決の正反対だ。

 裁判はフランスのAHTOP(ホテル、旅行エージェント、労働組合などが加盟する団体)の苦情を受け、パリ地方裁判所が欧州裁判所に付託した。AHTOPはエアビーが単にオーナーとゲストをプラットフォームで結びつけるだけでなく、フランスの法律に違反する無許可の不動産業者だと主張した。

 パリ地方裁判所はフランスで宿泊プラットフォームを運営するエアビー・アイルランド(エアビーの欧州本社はアイルランド所在)に不動産業法を適用しようとした。フランスの不動産業者はライセンスが必要だが、同社は認可を受けていなかった。欧州裁判所がエアビーを不動産業として規制できないとした根拠は、第1にエアビーは直接の資産所有者でなく仲介サービス提供者であるが、ゲストに請求する料金の決定に影響力がないこと、あるいはプラットフォームに施設の姿が見えないことだ。第2は不動産業免許不保持でエアビーを規制しようとしたことを欧州委員会(EC)に知らせていなかったことだ。00年に制定された欧州連合(EU)の電子取引規則によると、欧州で情報の社会サービス提供の自由を制限しようとする加盟国は、まずECにその計画を報告する義務がある(報告があっても判決は変わらなかっただろう)。

 しかし判決のインパクトは限定的かもしれない。欧州裁判所はこの裁判で情報提供サービスに関して公共サービス、公衆衛生の確保、治安あるいは消費者保護のためにEU加盟国は対策を講じることができることを確認した。すなわちフランスでは不動産業として規制できないものの、その他EU加盟国で健康、安全、消費者保護、あるいは課税、建築用途、都市計画のための法律を施行できること、公衆の安全を損なうことがあれば、どんなプラットフォームでも規制できるということだ。

 現在AHTOPはエアビーを不動産業法でなく公正競争法で規制するよう政府に要求することにした。世界各地でエアビーの短期宿泊事業が、近隣社会の迷惑、伝統的ホテル業との不公正な競争(課税や安全規則などで不利な立場)で非難されている。一方、現行のEU電子取引規則が急速に拡大したEコマースの現状に適応していないと改正を求める声がある。彼らはサステイナブルツーリズム促進のためにも短期賃貸市場の規制強化が必要だが、今回の判決で政府の権力が弱体化したと主張する。

 欧州裁判所の決定はプラットフォーム規制のあり方を示し、エアビーの成長を支援する法的枠組みを明確にした。エアビーは情報社会サービス提供者として引き続きEU指令の規制を受ける。フランスは米国に次ぐエアビー宿泊施設(パリは世界最多の6500件)の登録がある。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。