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2020年、果たして大変革は起こりうるか?

2020年3月9日 12:00 AM

 ツーリズム専門サイトが記者やアドバイザーなどに自由に20年に起こるかもしれない業界トピックを予測してもらった結果を特集している。シリアスというより面白さを狙った要素が強いが、新型コロナウイルスではないがとんでもないことが発生する昨今の情勢からすると、気持ちの柔軟性を保つことが必要であり、推測のいくつかを紹介したい。具体化する保証はないのでご注意を。

 実現したら多大な影響を及ぼしそうなのがアマゾンによるエクスペディア買収だ。アマゾンはいろいろな形でツーリズムへの参入をトライしているが大きな成果は見られない。そこで同じシアトルに本拠を置くエクスペディアを飲み込んでしまうのではという臆測である。ご承知の通りエクスペディアグループのバリー・ディラー会長は昨年12月にエクスペディアのCEOとCFOを首にしたが、その後の方針をいまだ明確にしていない。

 不振の理由はいくつかあるが衆目が一致しているのがグーグルとの摩擦だ。世界一のOTAブッキング・ホールディングスのグーグル依存率が比較的低いため、時価総額ではエクスペディア約200億ドルに対しブッキング820億ドルと大差がついている。ちなみに2位は昨年10月にグループ名をTrip.comに変更したシートリップで、時価総額215億ドルでエクスペディアは3位となる。

 こうした状況を根本的に変えるかもしれないのがGAFAの1つでグーグルに対抗する力を有するアマゾンによる買収だ。直近のエクスペディアの市場価値は160億ドルだが、買収となればプレミアムが生じ価格は200億ドル程度(約2兆円)になるとされるがアマゾンに出せない金額ではない。

 クラウド事業を別格とするとアマゾンの強みは世界中の顧客名簿とその顧客に物品を届ける能力と思われるが、旅行という無形の商品をアマゾンが販売するとしたら今までのツーリズム産業にない切り口と手法を導入する可能性もあり興味深い。

 他にはアジアの航空会社が他業種の企業買収に乗り出し収益拡大を狙うというものがある。エアアジアは機内食を提供するファストフードチェーンの展開を開始し、新しいラベルによる音楽配信サービスも開始した模様だ。こうした動きがさらに拡大すると予測している。

 また、最近報道されるようになったが、ユニクロやH&Mのようなファストファッションが低開発国での自然環境や労働環境にネガティブなインパクトを与えているという見方が増えてきて同様にマスツーリズムを推進する旅行関連企業のイメージダウンも起こりうる。環境に優しい衣類や食料を購入することは生活の質の向上というメリットがあり取り組みやすいが、旅行の場合は休日に旅行しないとか遠くに行かないといったネガティブなインパクトがあるため質への転換はあまり進んでいない。しかし、フライトシェイム運動や英国で検討されている新規の航空税などに見られるようにツーリズムについてもこうした締め付けが強まると思われる。

 また、16年のマリオットによるスターウッド買収以降大きな変動のない宿泊業界で今年は大型買収が起こりうる。大手による中小買収でなく大手が大手を吸収する可能性が高い。

 果たして日本のツーリズム産業界でも驚くような変革が起きるだろうか。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。