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キャンセルサポート 旅行大手導入で業界標準化?

2020年3月9日 12:00 AM

旅行大手の取消料サポートに中小からは懸念の声も
(C)iStock.com/AlexLMX

エイチ・アイ・エス(HIS)は昨年2月から旅行キャンセルを補償する保険商品の販売を開始。JTBも4月からルックJTBで出発間際の旅行キャンセルで発生する取消料の補償サービスを開始する。日本旅行など追随する動きもある。取消料のサポートは業界標準化へと向かうのだろうか。

 HISが三井住友海上火災保険と共同開発した「HISキャンセルサポート」保険は、昨年2月の販売開始以来、今年1月までの累計で50万人以上が利用。三井住友海上が「保険の新商品としては上々の売れ行き」(東京企業第二本部航空運輸産業部営業第二課・谷平吏司課長代理)と喜ぶヒットとなった。

 HISとしても大きな手ごたえを感じており、「50万人は、当社が取り扱う年間約300万人の海外旅行者数の6分の1ほどで16%に相当する。顧客の反応も良くSNSにも『キャンセルサポートに入っていてよかった。助かった』と喜ぶ声が多数投稿されている」(飯田憲史執行役員海外旅行営業本部長)という。HISキャンセルサポートのヒットは、取消料サポートを求めていた旅行者が数多く存在していたことを示している。

 HISが取消料サポートに力を入れた背景には、航空座席の仕入れ環境の変化と、旅行者の旅行会社離れという事情がある。具体的には旅行会社に供給される航空座席運賃のペックス化が進行したことで、「早めに購入すれば安いが、すぐに発券する必要があるうえキャンセル料は全額というケースも増えている。旅行者がためらっているうちに席がなくなり、希望した値段では購入できなくなってしまう。販売店からも旅行者がためらう状況を報告されることが増えた」(飯田本部長)。こうした現状を打開するために、旅行商品購入の障害を取り除き旅行者の負担軽減を図る保険の開発を発想したわけだ。

 他社に先がけて不測の事態へのサポートを強化し、条件付きの取消料免除などを含む「ルックJTB安心パック」を提供してきたJTBも、取り組みの背景として航空券仕入れ環境の変化を指摘する。そのうえで「旅行業界として重要なのは、まずは顧客を増やすこと。またパッケージツアーの外側へ行ってしまった旅行者を、もう一度どうやって取り込むか。そのためには安心して申し込める環境を整えていかねばならない」(海外仕入商品事業部商品戦略部商品計画課・富田由美商品戦略担当課長)と説明する。そのためには「取消料のリスクが不安で予約に踏み切れない旅行者の背中を押し、気兼ねなく旅行に出かけられるサポートの仕組みが欠かせない」(同)という。

旅行者の不安解消につなげる

 取消料への不安解消の対策はさまざまだ。HISは三井住友海上との保険商品の共同開発を選択した。HISではペックス運賃の存在感が増してきた4年ほど前から取消料サポートの必要性を認識し、三井住友海上との共同開発に着手。どのような事態を補償対象にするかといった課題を中心に両社間の話し合いを重ね、作業を進めていった。「話し合いの中では、特に旅行キャンセル理由の中で多かった『急な出張』や『突然の体調不良』などを補償の対象に入れて旅行者の不安解消につなげたいとの要望を伝えた」(飯田本部長)

 その結果、HISキャンセルサポートでは、従来の保険商品ではカバーしていなかった「海外出張や国内2泊以上の宿泊を伴う業務出張」や「家族の通院」「妊娠・出産・早産・流産」が補償対象となり、加えて「ペットの死亡」「パスポートの置き忘れ」「パスポートの残存期間不足」といった事態も補償される手厚い内容となった。

 HISキャンセルサポートは実は保険業界にとっても目新しい商品で、三井住友海上では「業界初」をうたっている。海外旅行保険では渡航先の戦争やテロ・天災・火災を理由に旅行をキャンセルしたり、本人や親族の死亡・危篤等を理由にキャンセルした場合に補償するキャンセル費用特約はあった。しかし補償の対象事由は限定的だ。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年3月9日号で】[1]

Endnotes:
  1. 【続きは週刊トラベルジャーナル20年3月9日号で】: https://www.tjnet.co.jp/2020/03/08/contents-24/