観光庁予算を読む 総額681億円はどう使われるのか

2020.02.24 00:00

20年度観光庁予算は、大幅増となった前年度から一転して2.2%増・680億9400万円にとどまった。東京五輪を機に多くの旅行者が訪日し、世界における今後の日本のイメージを左右することを意識し、円滑な出入国を含むストレスフリーな環境整備等に多くの予算が割かれた。

 東北復興枠予算の33億9500万円を加えた総計では714億8900万円で前年度比0.5%増。予算の財源に充当された国際観光旅客税収の金額は19年度の485億円から約31億円増えて510億6100万円。20年度予算の75%が国際観光旅客税を財源としている格好だ。宮内庁予算として三の丸尚蔵館の整備に29億3900万円が割かれているが、これも国際観光旅客税を財源としており、同税からの充当額は合計で約540億円に達している。

 国際観光旅客税収分は観光庁に一括計上した後に他省庁に移し替えられるが、「円滑な出入国・通関等の環境整備」として法務省が15.9%増の81億8400万円、財務省が17.2%増の35億3000万円、「文化資源を活用したインバウンドのための環境整備」として文化庁が1.6%減の98億4000万円、「国立公園のインバウンドに向けた環境整備」として環境省が35.1%増の68億6200万円をそれぞれ執行する。

 国際観光旅客税を財源に観光庁以外の4省庁が執行する観光関連予算は合計284億1600万円で、同じ事業の前年度予算と比較すると約13%増となっている。

 国際観光旅客税収には2000万人規模の日本人海外旅行者も貢献しているが、アウトバウンドに割かれる予算は20年度においてもわずかだった。明確にアウトバウンド関連と仕分けられるのは「旅行安全情報共有プラットフォームを通じた旅行者の安全の確保」と「教育旅行を通じた青少年の国際交流の促進」で、予算額は合計でも1億3900万円と予算全体の0.2%に過ぎない。

ストレスフリーな環境整備に注力

 観光庁は20年度予算の3本柱として、「ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備」「我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化と観光産業の基幹産業化」「地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上」を挙げている。

 ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備には1.7%減の273億8100万円を投じる。今夏に東京五輪が開催となり、ここでの日本のイメージがポスト五輪の訪日観光の行方を左右することにもつながるため、昨年より減少したとはいえ、より高度なインフラ整備に力を入れた予算が組まれた。

 このうち円滑な出入国・通関等の環境整備は法務省と財務省に予算を移し替えて執行されるが、出入国に関しては顔認証ゲートの国内7空港への整備を進めるほか、海外出発空港においてプレクリアランスを実施し、国内到着空港における手続きの迅速化を図る。具体的には台湾の桃園空港へ法務省職員を派遣してプレクリアランスを行う。

 また、通関に関しては事前にアプリで電子申告すれば書面による申告手続きを行わずに迅速に通関できる専用ゲートを国内主要7空港に整備する計画だ。

 観光庁は31億7600万円を投じて空港におけるファストトラベルを推進する。世界最高水準の空港利用者サービスを目指す取り組みで、顔認証による搭乗手続きの円滑化や、一度情報を登録すれば以降の手続きでパスポートや搭乗券を提示することなく、いわゆる顔パスで本人確認できる自動化機器の導入を図る空港会社などに対してその費用の一部を補助するもの。20年度は成田、羽田、関西の3空港が対象となる。

 空港等のゲートウェイから観光地等へ向かう公共交通利用環境の革新には44億円を投じる。具体的にはニーズの高い多言語対応、無料Wi-Fi、トイレの洋式化、キャッシュレス決済対応等の取り組みを行う内容で、観光庁では「一気呵成に進めたい」(総務課)としている。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年2月24日号で】

関連キーワード