ビジネスクラスの進化を牽引する全日空の「THE Room」

2020.02.24 00:00

扉付きの個室型シートを、前向き、後ろ向きと交互に配置。従来と座席数はほとんど変えず、快適性を大幅に向上させた

20年前にフルフラットシートが登場して以来、進化が著しいビジネスクラス。現在その頂点にあるともいえるのが、扉付きの個室型シートで、日本では全日空(NH)が19年8月から導入を始めた。羽田/ロンドン線でその新シートを体験した。

 「THE Room」と名付けられたビジネスクラスのシートは、B777-300ER型に1-2-1の配列で全64席を設定。扉付きに加えて、前向きと後ろ向きの座席を交互に配置したことも特徴だ。ビジネスクラスでは座席をフルフラットにするとき、足元を前席のサイドテーブルの下に入れる仕様が一般的で、シートの幅は制約される。NHは座席を進行方向、その逆向きと交互に配置することで、この課題を解決した。シート幅は内寸で約97㎝あり、従来の倍も広い。列車とは違い、後ろ向きに座っても違和感はない。このゆとりが、機内の居住性を大きく改善した。

シート幅は実測で約97㎝。パーティションを上げると、就寝の際も隣の乗客の気配を感じることなく落ち着ける

 シートまわりの機能性にも工夫を凝らす。なかでも印象的だったのは、個室の扉の造りと最新の照明だ。扉は横に動く引き戸と縦に動くパーティションを組み合わせたもので、プライバシーレベルの調整が自由にできる。

 照明はパナソニックが住宅やホテル等に導入した技術をもとに共同で開発。読書灯は本や雑誌の文字がくっきり読みやすいように、また食事灯は温かみのある色調にして、食事がよりおいしく見えるようにした。確かに文字は見やすく、料理は照明に映えた。

空間が広いため、個人モニターは大画面でも圧迫感はない。右上は食事灯

 24インチかつ4K画質の個人モニター、ワイドで安定感のあるテーブル、電動式の窓のシェードなどほかにも売りは多いが、幅広のシートと誰にもじゃまされることのない空間は、何よりのアドバンテージだ。NHがいう「自分の部屋でくつろぐ気分」を満喫し、リフレッシュしてヒースロー空港に降り立った。

国内外の著名シェフや酒のプロ、トップレベルの全日空のシェフで編成する「THE CONNOISSEURS」(ザ・コノシュアーズ)が食事を監修

取材・文/中西克吉

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