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パッケージツアーのイールドマネジメント

2020年2月24日 12:00 AM

 イールドマネジメントは最適の収益を上げるために市場の変化に対応して商品の価格調整を行うこと。パッケージツアーは素材の事前仕入れが必要なので、販売コストも加わり商品が売れ残ればツアーオペレーターに損失が発生する。特にピークの夏商品の売れ行きは、当該年度の業績に大きく影響する。夏のパッケージツアーの販売は半年以上前のクリスマス頃から始まる。これまで消費者は早い購入がベストディールになると長く信じてきたが、近年はレイトマーケットと呼ぶ出発前3カ月以降に売れ残りの安売りが珍しくなくなった。消費者は安心してパッケージを購入できない。

 イールドマネジメントの手法は伝統型ツアーオペレーターとLCC(ローコストキャリア)とは正反対だ。伝統型ツアーオペレーターは航空会社から1年を通じて価格を提供される。それに宿泊コストやマージンを加え、出発空港や時間などの要素を含め宿泊ホテルごとの旅行代金を決定しパンフレットを作成して販売に移る。従って価格は出発日まで固定していたが、近年は売れ残った座席数を勘案してフライト別、出発日ごとに変動するホテル別料金体系に移行した。

 歴史的にオペレーターは在庫の40%をレイトマーケットで販売するが、フライトのロードファクター98%目標を維持するために、その7割を赤字でも販売してきた。ここ数年、この弾力的料金モデルに進化したが、早く購入した顧客が最高の料金を支払い、遅い顧客が安い料金を負担する基本は変わっていない。

 一方、オペレーターにも利用されるLCCのイールドモデルは安い運賃から始めて席が埋まるにつれて値上げする。イールドマネジメントを早く行うことで、遅い予約客を高い料金でいじめることになるが、それは早い予約者に実質的な報償を与え、販売促進に役立つので合理的だ。エクスペディアはこのモデルを活用してLCCのフライトを仕入れ、ツアーオペレーターと同じブランドなしのホテルをパッケージして、レイトマーケットで安く売ることができた。TUIはこの脅威を認識して自社独占の差別化したホテル商品を提供し、OTAやLCCのオペレーター部門が真似できない施策で安売りを回避した。

 英国のパッケージ販売計画数は毎年事前に民間航空局(CAA)に申請して承認を受ける。トーマスクックとの競争がなくなって、20年度に550万席販売を計画するTUIがレイトマーケットを支配することになると、この遅い市場でパッケージ価格の上昇につながる可能性が高い。

 トーマスクックの残した250万席は、パッケージ販売数でTUIに迫る2位のジェット2(390万席)とパッケージ販売目標を100万に増やしたLCCのイージージェット(6位)が事実上吸収した。両社が大量の増加分を投げ売りする可能性もないではないが、強力な販売力で早めのイールドマネジメントを維持するだろう。

 20年はレイトマーケットで大手オペレーターの支配が予想され、第3者への座席供給が減って安売りは減少しそうだ。トーマスクックの投げ売りもなくなり、中小オペレーターやOTAは夏の仕入れが難しくなり、コスト上昇に直面するだろう。消費者には安心して早期購入を勧められる。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。