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イン・アウト連携を進めよう 日本ならではの観光立国スタイルへ

2020年2月17日 12:00 AM

イン・アウト連携に基づく日本ならではの観光先進国モデルを提示できないか
(C)iStock.com/dlinca

訪日外国人と日本人出国者合わせて5000万人が行き交う日本の観光市場だが、インバウンドは成長が減速。アウトバウンドも中長期的に悲観要素が少なくない。そうした日本の観光を持続的に発展、成長させていくには、イン・アウトの積極的な連携を模索していく必要がありそうだ。

 観光立国宣言以来、日本のインバウンドは順調に成長。訪日外国人旅行者数2000万人は当初20年の目標だったが、4年前倒しして16年に達成。同年には新たに20年4000万人の目標が掲げられた。しかし成長ペースは期待したほど伸びず、現在、達成は絶望的だ。加えて日韓関係の悪化や中国発の感染症流行などにより、全訪日客数の約半数を占める韓国と中国からの客足は急減速。アジア諸国を中心に行ってきたビザ緩和による訪日旅行者拡大という手法も効果を発揮できる範囲が狭まり、世界の観光デスティネーションとの旅行者の奪い合いはこれからが正念場となる。希望の源だった東京五輪も半年後には終わってしまう。

 オーストラリアの巨大山火事に象徴されるように世界的な気候変動や自然災害の不安定要素もインバウンドの将来に影を投げかける。受け入れ環境に目を転じても、京都をはじめとする観光エリアではオーバーツーリズムによりインバウンドの経済効果よりデメリットが目立つようになり、観光公害なる言葉も各地に広がりつつある。

 アウトバウンドについても、昨年は海外旅行者数が念願の2000万人を超えたものの、今後も同レベルの需要を見込めるか否かについて、悲観的な見方も広がる。しかも海外旅行者数の増加が、必ずしも旅行業界の利益につながらなくなりつつあるという現状認識は多くが認めるところだ。FIT化する需要に対応し、グローバルOTAの攻勢に対抗していくためには高度な技術力とそれを維持する資本力が必須だが、どちらも不十分というのが日本の旅行業界の実情である。アウトバウンドもインバウンドもこれまでのビジネス手法が通用しなくなりつつある。

 そこで視点を変えてみる。日本ほど急速にアウトバウンドとインバウンドの市場ボリュームが入れ替わった国は数少ない。中国のように政策の変化や経済成長に伴いアウトが急増し、瞬く間にインを逆転したようなケースは今後も見られるかもしれない。しかし日本のように、はるか先を行っていたアウトがたちまちにインに追い越されるという経過をたどった国は特異といえるだろう。

 日本の旅行業界においては、海外旅行ビジネスで精力的に活躍した人材がまだ現役のうちに、観光旅行市場の中心軸が海外旅行から訪日旅行に移動した。また海外旅行ビジネスが旅行会社の屋台骨を支える構造は変わらぬまま、旅行業界のテーマは訪日旅行ビジネスへと移行しつつある。したがって、これまでのようにインとアウトを「全く別の分野」「別組織で取り組む別事業」「相互に連携できないビジネス」と捉えるかぎり、人材の有効活用も旅行会社の業績浮上もままならない。イン・アウト連携は避けて通れない道筋だ。

 その重要性が端的に表れるのは航空路線と座席供給の拡大だ。インバウンド需要増大により航空座席供給量が増せばアウトバウンドも促進し、双方向の需要が増大。さらなる路便拡大につながり好循環を生む。特に地方都市にはインバウンドあっての航空路線維持という側面もあり、地方発アウトバウンドでイン・アウト連携は喫緊の課題だ。

 1980年代から90年代前半にかけて、日本はアウトバウンド需要が急増。世界中の旅行業関係者の最重要市場と位置付けられた。各国ミッションが日本に殺到し、工夫を凝らしたプロモーションを投入した。彼らは観光局、航空会社、現地サプライヤーが団結し日本の市場攻略に取り組んだ。自国内では競合関係にある事業者同士でも他国に負けないため結束した。当時、外国からの旅客誘致に対応したアウトバウンド関係者は各国の結束のあり方やさまざまなアイデア、工夫の重要さを体感している。その蓄積から日本のインバウンドへのアドバイスは可能だ。

 日本のアウトバウンド業界がハワイやグアムといった大量送客デスティネーションで作り上げた合理的なハンドリングシステム、現地斡旋システムは日本の受け入れ体制づくりの参考になるとの声も少なくない。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年2月17日号で】[1]

Endnotes:
  1. 【続きは週刊トラベルジャーナル20年2月17日号で】: https://www.tjnet.co.jp/2020/02/16/contents-21/