サステイナブルツーリズム国際認証が鍵

2020.01.27 00:00

 世界サステイナブルツーリズム協議会(GSTC)の世界会議が12月初旬にポルトガルのアゾレス諸島で開催された。日本がGSTC観光地用基準を国の観光計画の一環として採用する世界最初の国になるとトラベルウイークリー誌が報じた。

 日本のメディアは12月22日に「政府は地域の経済や環境などに配慮した持続可能な観光を地方自治体に実現してもらうための指標を年度内に作成し、来年度初めに公表する。GSTCが定めた指標を参考にした“日本版”完成後はGSTCから承認を受けて海外にアピールする……」と報じた。

 世界観光機関(UNWTO)を含め約30の国際機関や団体で構成するGSTCは、持続可能な観光の向上を目指し国際認証を認定機関を通じて授与している。多彩な議題の中からトラベルウイークリー誌はプラスチックごみとサステイナブルツーリズム国際認証取得による効果に焦点を当て、ツアーオペレーターTUIのケースを紹介した。

 プラスチックごみに溺れる地中海の緊急事態が報告された。世界4位のプラスチック生産地の地中海諸国ではそのほとんどが1年未満でごみとなり多くは生分解されず、30年までに魚よりプラスチックが多い海となるとショッキングな警告。ごみの洪水は観光客の季節変動に比例し、観光が主原因の1つであり、ホテルなどはプラスチックを紙や木質に替える努力をしているが袋小路にある。使い捨てプラスチック製品削減だけでは不十分で、回避とリユース以外に解決はない。ホテルだけでなくすべての利害関係者を巻き込んで対策に当たり、従業員の教育と旅行者の啓蒙も重要とした。

 GSTCとTUIは、観光業が先頭に立って行動し、特に消費者をサステイナブルな観光商品に誘導することが鍵になるとの見解を示した。消費者の要求に焦点を当てるより、サステイナブルツーリズム国際認証取得を促進する方がベターである。消費者はサステイナブルな商品選択の幅が欲しいというが、業界はサステイナブルな商品を実際に求める消費者行動を望んでいる。

 消費者は予約時点では目的地、宿泊、クオリティーを考え、サステイナビリティではない。北欧のような敏感な市場ですらそうである。意識改革には時間がかかりすぎる。国際認証とともに消費者に分かりやすくサステイナブルな商品を選択できるようにすることが肝要と論じた。

 TUIによると、20年末までに年間1000万人の「よりグリーンでフェアな休暇旅行」という目標を1年早く達成した。「よりグリーンでフェアな旅行」とはGSTC認証のホテル利用を意味する。TUIは年間2800万人の利用者があり、観光のネガティブなインパクト緩和を消費者とともに行っている。同社の認証有ホテル利用者は15年には560万人、17年には830万人、18年には920万人と前年比12%増加した。

 認証有ホテルの質と顧客満足度およびエコ改善は認証無ホテルと比較してはるかに向上し、認証有ホテルでは二酸化炭素排出量は1泊当たり10%、ごみは24%、水の使用は19%減少した。サステイナブル認証取得はビジネスの増加、サステイナビリティ向上、コスト低下をもたらす実例を示し、勇気づける発表であった。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。

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