コンセプトはコネクテッド・トラベル

2020.01.06 00:00

 オンライン旅行業界で新しい言葉がはやりだした。さまざまなイベントで関連企業トップたちが口にした言葉はコネクテッド・トラベル。包括的な旅行サービス、とでも訳せばよいのだろうか。

 最近ではブッキング・ホールディングスとエクスペディアのトップがそろってコネクテッド・トラベルが今後の成長の可能性を示すと述べている。実は両社の株価の伸びは最近芳しくなく、エクスペディアのマーク・オカストロームCEOは年末に退任した。1つの原因はデジタルマーケテイングの手法が以前ほど効果的でないことである。

 状況を打開し成長を果たすためにコネクテッドというコンセプトが重要とされる。これまでオンライン技術導入で旅行は素材ごとに分けられ、世界中の人が世界中の素材を簡単にネット上で入手し手配することが可能になったが、さらなる発展には分割された旅行素材を組み合わせる(コネクトする)システムが核になるということのようだ。

 OTAは部品をただ販売するのでなく、異なる素材を組み合わせたダイナミックパッケージのようなものを作り上げ、例えばそこでトラブルが生じたときに必要な通知を顧客に送り、必要があれば手配済みの予約を取り消し新しいオファーを届けるといったことを実現したいのである。

 ブッキング・ホールディングスのグレン・フォーゲルCEOは昨年11月のイベントで述べている。「コネクテッド・トラベルを実現するにはあらゆる要素を取り込まねばならない。例えば手配した航空機が遅れた場合、ビジネスディナーの予約を取り消さねばならないかもしれない。もちろん、空港到着時の車の手配も調整がいる」

 こうなるとOTAが旧来の旅行会社のようなサービスを提供することになる。米国を中心にトラベルエージェントという用語が使われなくなりトラベルアドバイザーという呼称でその機能がある程度復権しつつあるとの報道があるが、OTAがアドバイザー機能を有するようになるということかもしれない。それを可能にするのは携帯端末で多用されるSMSなどのメッセージング機能と思われ、特別のアプリを必要としない可能性が高い。

 問題は旅行を通じてしかつながりのないOTAが個々の消費者の性向を十分把握し、問い合わせやトラブルが生じたときに望まれる対応策を提示できるかにある。仮にできても、実際に予約を入れたわけでもないOTAの変更依頼をレストランなどサプライヤーが受け入れるかも不明である。

 先行するのはグーグルかもしれない。すでにGメールのデータをもとに移動や宿泊の手配データがグーグルカレンダーやグーグルマップに反映されている。グーグルマップを使えば宿泊ホテル近郊で可能なアクティビティーの提案も入手できる。検索機能を核にさまざまな無料アプリを通じ知らぬ間に消費者個々人の趣味や志向を把握することにたけたグーグルが、知識と技術を旅行分野で活用しアドバイザー機能を確立する可能性がある。

 GAFAなどが蓄える個々人の嗜好に合わせた旅行商品紹介もAIを使えば可能だろう。人的サービスの重要性に頼る日本の旅行業界が生き延びるには、ビジネス形態も含めビジネスのあり方を抜本的に見直す必要が生じるかもしれない。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。