エイベックスがOTA事業参入 、月額会員制で手数料設けず旅館支援

2019.12.23 00:00

渡辺チーフプロデューサー(右)と篠田氏。
旅館の敷居を低くし、裾野拡大に貢献したいという

 音楽事業などを手掛けるエイベックスは4月、OTA(オンライン旅行会社)事業に参入する。第3種旅行業登録を取得し、旅館をはじめとする宿泊施設の会員制予約サイト「itoma(イトマ)」を開設する。

 施設から手数料を徴収せずに、会員から受け取る月額料金を主な収益源とするモデルを構築した。個人経営の中小旅館を主な掲載対象とし、経済的負担をかけずに集客や経営を支援することを理念に掲げ、平日の稼働率向上につなげる。

 ユーザーは月額2980円を払うと、月~木曜は正規料金の50%割引、金曜は15~20%割引が適用される。全日程で割引率を5%に抑えた無料会員枠も設けた。価格帯に限らず上質な施設を対象とし、現地調査で選定した施設を掲載する。開始当初は100施設を目指す。若者らの利用拡大にもつなげたい考え。

 同事業を担当する新事業推進本部新事業開発グループの渡辺勝弥チーフプロデューサーと篠田翼氏は 国内大手OTA在籍時に旅館との関わりから課題を感じていたという。その後、そこから着想を得て、エイベックスに企画を持ち込み実現した。

 対象とする中小の旅館は富裕層向け宿泊サイトやOTAがカバーできていないと見ており、「平日に稼働率が5割を割り込むこともあるなかで、平日需要の創出で利益拡大に貢献できる」(篠田氏)と判断した。エイベックスには「主力事業とのシナジー効果などよりも、挑戦的な社風に引かれた」(渡辺チーフプロデューサー)という。

 旅館の理解や参画を得るための調査を実施したほか、クラウドファンディングでサイトを試験的に運用。予想以上の参加者があり、旅館からは利益が拡大したと好評だった。会員間の交流イベントや、ライブツアーを手掛けるエイベックス・トラベル・クリエイティヴとの連携も検討する。