フェイクレビュー?英消費者団体にトリップアドバイザーが反論

2019.10.28 00:00

 レビューの意味をあらためて説明するまでもない。多くの消費者は旅行や商品の購入に際してインターネット上で他人のレビューを参考にする。しかし以前からフェイクレビューが存在し、英国消費者市場局(CMA)は監視を強めてきたが、9月にトリップアドバイザー(TA)が英国消費者団体Which?のやり玉に挙がった。英国のメディアが両者の主張を取り上げるなか、トラベルウイークリー誌はTAの反論を詳細に紹介する。

 Which?はパリ、ローマを含む世界の人気デスティネーション10カ所でトップ10にランクされた10ホテル(計100ホテル)に対するTAのレビュー25万件を調査し、うち15ホテルにフェイクレビューで明らかな虚偽の品質証明が与えられていると発表した。そして、同社がそれを差し止める強力な措置を取らなかったとし、TAのようなプラットフォーマーは消費者に提供する情報に責任を持つべきだと非難した。

 その後TAはヨルダンで5スター評価したホテルのレビュー730件を削除したが、TAによると、それは同社独自の調査によるもので、Which?調査と関係がないと反論した。「これは毎日行っている作業で、調査員は常時フェイクと疑われるレビューのパターンを監視している。イタリアでは、検察と協力してフェイクレビューを書いた1人を監獄に送った」という。

 Which?の分析はデータも少なく、フェイクパターン認識に欠陥があるとして、「正確に不正を見抜くには、IP情報、位置データあるいはレビュー提出時に利用されたデバイスの詳細まで幅広いデータポイント分析がなければならない。このデータの欠けたWhich?の調査結果はレビュー詐欺の十分な指標にならない。一方、われわれには洗練された詐欺発見テクノロジーがあり、20年近く数百のレビュー追跡で得られたレビューパターンの知識と理解に基づく数多くのデータポイントを分析できる。これはWhich?よりはるかに厳密にレビューを追跡し分析する能力がある。われわれは詐欺調査で業界トップチームを率いて、自社サイトを守るためにフェイクレビューを誰よりも厳しく追及している。自分たちのアプローチに自信を持っており、それが世界中数百万の消費者の信頼を維持できる理由の1つである」と主張した。

 08年に発効したEU指令で、英国でもTAなどの旅行情報サイトで人為的に自社を高評価するレビューを書いたホテルスタッフは罪に問われる。この規則を犯せばどんな企業でも起訴され、かなり高い罰金とスタッフは投獄される可能性がある。

 英国の不公正取引法でも、虚偽的活動により標準的な消費者が本来買うことのなかった何かを購入することになれば、その商行為に従事する業者は罪に問われる。虚偽的活動は特にフェイクレビューに言及していないが、CMAは16年に初めてフェイクレビューを行ったマーケティング会社TotalSEOを告発した。同社は14~15年に26の異なるサイトで86の小規模会社のために行った800以上のフェイクレビューの削除を命じられた。

 世界中にフェイクレビュー投稿のプロが存在する。プラットフォーマ―の監視だけでは状況は変わらないだろう。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。