スタートアップ増加、欧米で再編成進むビジネス旅行市場
2019.10.07 01:00
英国フィナンシャルタイムズは、欧米でビジネス旅行市場にスタートアップが増えていると報じている。世界のビジネス旅行市場は成長を続け、20年に1.8兆ドルになる。市場が細分化されているので、新しいトラベルマネジメントカンパニー(TMC)参入の機会は十分ある。例えば世界最強のアメックスGBTの英国市場シェアは17%だが、取扱額で英国2位の企業の15倍ある。
スタートアップは固有のアプリとサービスで、ビジネス旅行市場を侵食する。アメックスなど大手はプラットフォーム刷新の投資を増やしている。エクスペディア傘下のエジェンシアは昨年約80億ドルを販売しグループ最大の成長部門となった。エアビーアンドビーが14年に開設したビジネスプラットフォームは昨年の取扱顧客が70万人と倍増した。大手による盛んなスタートアップ買収は投資家の関心を集め、この市場に投資が増えた。
ビジネス旅行はグローバルで複雑、取り扱いに手間がかかる。ある会社は重要な会議に出席の顧客がユーロスターに乗り遅れ、スタッフがパニックになり、その対応に2時間を要した。VIPのフライトがキャンセルになれば、最良の代替案が必要だ。数カ月あるいは2年間の滞在を望む顧客に即座にソリューションを提供できるか。英国のトラベルパーク社は社員の半数が顧客サポートに従事する。24時間年中無休のサービスで人件費は高くなるが必要コストだ。
人件費はグーグルなど大きなテクノロジー会社がビジネス旅行市場に乗り出さない理由だ。普通の零細企業はグローバルな顧客サービスのコストに耐えられない。それでも魅力的なニッチ市場を見出したアプリがいくつかある。世界各都市で地上手配も行う配車アプリのゲットはウーバーやリフトと差別化され、ホームライクは外国に転勤する研修生など長期滞在社員のアパート市場に特化する。スタートアップの多くは特定地域あるいはビジネス旅行の一部分に業務を絞って成功しており、市場をあまり混乱させていない。
企業サービスのトレンドは消費者化といわれる。拡大するビジネス旅行をサポートする簡単なアプリは個人向けに設計されたものだ。ホワッツアップコールやグーグルドライブは多くの国際企業に利用される。ビジネス旅行に出かける社員も個人旅行者と同様、エージェントに電話などでサポート依頼ができる便利なサービスを求める。
設立4年のトリップアクションズはすでに40億ドルの市場価値を持つ大手だが、顧客の旅行記録を綿密にチェックして志向を予見し、旅程変更があれば自動的にフライトを再予約し、詳細を通知する。結果として平均的な顧客のビジネス旅行手配時間を1時間から6分に短縮できたという。
ニューヨークのロケットリップ、トラベルバンク、BTMソフトウエアのローラなど成長している会社に投資会社は各数千万ドル規模を投資する。プライベート・エクイティ・ファンドECIは16年に業務渡航を扱うリー&マッケイから投資額の3倍以上の売却益を得た。新世代のプラットフォームに投資家の関心は強いが、ビジネス旅行市場は景気変動が激しくリスクもある。投資判断のカギは対象会社が不況時にどれだけ耐久力があるかだ。
グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。
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