消費税増税の影響度 観光関連消費を減退させないために

2019.09.30 01:00

10%に引き上げられる消費税。観光関連消費にマイナス影響は
(C)iStock.com/PiotrChalimoniuk

10月1日から消費税が10%に引き上げられる。5年半ぶりの税率引き上げは、消費動向をどのように左右し、旅行・観光関連消費にどの程度の影響を及ぼすことになるのだろうか。

 消費税率が5%から8%に引き上げられた前回から5年6カ月ぶりとなる消費税増税が10月1日に迫った。税率2ポイントの引き上げは、旅行・観光関連消費にどう影響するのだろうか。

 前回14年4月の増税は旅行・観光消費に少なからぬ影響を及ぼした。観光庁の旅行・観光消費動向調査によれば、宿泊を伴う国内延べ旅行者数は、14年4月以降、15年1~3月までの4四半期連続で対前年を割り込む結果となった。14年(1~12月)の年間実績でも国内延べ旅行者数は5.7%減少。宿泊を伴う旅行に絞れば7.2%の減少となった。こうした落ち込みの大きな要因が消費税増税だったとされている。

 今回も消費増税が企業マインドや消費者マインドに影響を及ぼすことは避けられないだろう。帝国データバンクが発表した企業の意識調査によると、増税が企業活動にマイナスの影響を与えると回答した企業は51%となった。また、マクロミルが行った「消費税増税に関する調査」では増税後の消費イメージについて、支出減との回答が多かったのは28%の「外食」が1位で、以下、「衣料品・服飾費」「交際費」と続き、「教養娯楽費」は15%で、家具・家事用品と同率4位となっている。旅行・観光にも少なからぬ影響が出ることは避けられまい。

 しかし今回の消費税増税に対する旅行業界の見立ては冷静だ。JATA(日本旅行業協会)の19年9月期旅行市場調査では国内旅行の10~12月のDI値(景気動向指数)は現況(7~9月)より3ポイント上昇しマイナス1となっている。秋の連休や日並びの良い年末年始への期待が、増税スタート期への不安を上回っているようだ。

 また過去の消費税増税の経験から、増税前の駆け込み需要が需要を先食いしてしまうことが、増税後の消費の冷え込みを招いていることが分かっていることも大きい。実際に旅行・観光消費動向調査によると前回の増税直前、14年1~3月期の国内旅行消費額は前年比4.6%増となり、観光庁ではその理由を増税前の駆け込み需要があったものであると分析している。

 つまり増税前の駆け込みが多ければその反動は大きく、駆け込みが少なければ増税後の反動も小さくなるというわけだ。その点、今回は駆け込み需要が目立たない。エアトリが消費者を対象に行った消費税増税に関する調査でも、「増税前にやっておこうと思っていることTOP5」を尋ねたところ、2位には18.0%で「旅行・買いだめ」が入っているものの、54.5%を占めた圧倒的な1位は「特にない」だ。消費者の構えは駆け込み消費に突っ走る態勢ではなかったようだ。同調査も「消費者は今回の増税を冷静に見ている」とまとめている。

 旅行会社からも駆け込み需要や、その反動に関してはほとんど意識していないとの声が聞かれた。JTBは「増税前の駆け込み需要は特に把握していない。またそうした需要を取り込むための動きもしていない」(広報室)という。他社も「駆け込み需要はほぼないと見ている」(日本旅行秘書広報部)、「増税を前にして市場動向に変化があったとは見ていない」(阪急阪神交通社ホールディングス広報部)としている。

 旅行会社にとっての懸念材料は、市場動向への影響より、むしろ増税後の仕入れコストの上昇といえるかもしれない。パッケージ商品はその点を織り込み済みで値付けしているとはいえ、増税が仕入れコスト増加として跳ね返り、利益を削る結果になりかねないからだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル19年9月30日号で】

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