ラグビーW杯がやって来る 訪日観戦客40万人をどうつかむか

2019.09.09 01:00

欧州や豪州から高額所得層の観戦客が来日するという
(C)iStock.com/LeArchitecto

ラグビー・ワールドカップ(W杯)がいよいよ9月20日に開幕する。11月2日までの44日間、全国12会場で計48試合が繰り広げられる。20年の東京五輪、21年のワールドマスターズと続くゴールデンスポーツイヤーズに向けた試金石としても注目される。

 前回のラグビーW杯、15年イングランド大会で日本代表が優勝候補の南アフリカを破り、世紀の番狂わせを演じたことでラグビーは一躍注目を集めるようになった。それでもラグビーW杯の真価が日本で十分理解されるにはまだ至っていない。

 ラグビー・ワールドカップ2019組織委員会によれば、世界で40億人を超える人々が大会をテレビ視聴する巨大なスポーツイベントであり、前回大会は200カ国で放映された。世界的には夏季オリンピックやサッカーW杯と並ぶ地球規模のスポーツの祭典、世界3大スポーツイベントとして認知されており、15年のイングランド大会は約240万人がスタジアムで観戦した。

 9回目の今回はアジアで初めて開催されるW杯で、組織委員会は「ユニティ(Unity)」をテーマに掲げる。ラグビー伝統国と日本をはじめとするアジアの選手、ファンが一体となってアジア初の大会を一緒に創り上げることを目指そうという意味だ。大会は9月20日、東京都の東京スタジアムで開幕し、予選リーグ40試合が全国12会場で戦われた後、決勝トーナメント8試合が行われる。決勝は11月2日に神奈川の横浜国際総合競技場で実施され、合計48試合が44日間にわたって繰り広げられる。

経済波及効果は2330億円

 ラグビーW杯は開催都市とその周辺に大きな経済効果をもたらすと期待される。日本政策投資銀行は、試合が行われる全国12開催都市への経済波及効果を総額2330億円と試算。内訳として宿泊費、飲食費、交通費、買い物などの直接効果が1422億円、一次波及効果(直接効果に誘発される財・サービスの生産額)が528億円、二次波及効果が380億円と見積もっている。

 ラグビーW杯が大きな経済効果を生む理由の1つが開催期間の長さだ。世界3大スポーツイベントで比較すると、20年東京オリンピック&パラリンピックが計30日間。サッカーW杯(18年ロシア大会の場合)は32日間。これに対してラグビーW杯は44日間。宿泊費、飲食費、交通費などの直接効果は大会日程に比例して大きくなる。

 トラベルデータ分析のアダラが豪州、ニュージーランド、英国、イタリア、フランスなど大会に参加する主要10カ国からの訪日旅行者の大会期間中の予約動向を分析したところ、約40%が2週間以上の滞在、約20%が3週間以上の滞在で全体平均で16.9日に達している。これは昨年の訪日旅行者全体の平均滞在日数より1週間以上長く、W杯が滞在の長期化を促すことが明らかだ。

 日本政策投資銀行のレポートでは、「過去大会の実績から相当数のインバウンド客が見込まれ、欧米等を中心に比較的高所得者層の入り込みも期待できる」と観戦客の特徴に触れている。欧州ではサッカーは労働者階級のスポーツ、ラグビーはホワイトカラーのスポーツといわれるほどで、サッカーとのファン層の違いがよく知られている。

 日本政府観光局(JNTO)が英国と豪州で実施した調査でもラグビーW杯日本大会への関心度は高所得層ほど高いことが裏付けられた。調査によると、所得額別に関心度を尋ねたところ、両国とも最も所得が高い層の関心が最も大きかった。英国では、全体平均では「とても興味がある」13.2%、「興味がある」20.6%、「やや興味がある」23.2%だったが、所得額10万ポンド以上の層では、それぞれ34.3%、28.6%、20.0%で、全体平均よりはるかに関心度が高かった。豪州も同様の傾向が見て取れる。

 アダラの分析でも、大会期間中の訪日客はビジネスクラス以上の前方シートを予約する者が多く、特に欧州からの訪日客の場合は34.0%に達しており、富裕層の多さがうかがえる。

【続きは週刊トラベルジャーナル19年9月9日号で】