2019年9月9日 1:00 AM
農林水産省は8月末、新たに35地域を農泊(農山漁村滞在型旅行)の実践地域に選び、計503地域となった。
17年度から採択が始まった実践地域は全国に波及し、農泊を軸とした訪日客誘致や地域活性化に対する関心の高まりがうかがえる。一方、観光立国推進基本計画では20年までにビジネスとして農泊が実践できる500地域を創出する目標を掲げているが、農水省は「ビジネスができる体制を整えている地域は少ない」(都市農村交流課)との認識で、訪日客受け入れ体制の整備やコンテンツの磨き上げを図る。
実践地域は、法人格を持つ推進組織を設立し、宿泊・食事・体験を提供できる体制を整えていることが採択の要件。自立的な資金運営のほか、マーケティングに基づく多様なコンテンツづくりやプロモーションができる体制構築を推進する。北海道が42と最も多く、宮城21、新潟19、熊本18と続く。
順調に増加しているものの課題も多い。17年度宿泊実績の178万8871人泊のうち訪日客は7.9%にとどまる。17年度採択の205地域を対象とした実態調査によると、ネット予約、案内表示、ホームページで外国語に対応した宿泊施設を有する地域はそれぞれ3割程度。訪日向け体験プログラムの提供は47%と半数に満たない。
日本ファームステイ協会(JPCSA)の上山康博代表理事(百戦錬磨代表取締役社長)は、「各地とも良質なコンテンツが見られるようになり、ビジネスとして成功する例も出てきた」と評価する一方、訪日対応としてOTA(オンライン旅行会社)との連携など販路を確保する視点やノウハウが重要としている。
農水省では来年度、組織体制の強化や地域のネットワーク化などを支援する。
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