空港のストライキが悩ませる英国の海外旅行者

2019.09.02 08:00

 この夏に外国旅行をする数百万人の英国人旅行者は、10月に想定される合意なきブレグジット(英国のEU離脱)に伴うポンドの下落に耐えなければならない。加えて、最繁期の空港から出かけようとする旅行者は、空港従業員とパイロットのストライキに悩まされる。これは過去にもたびたび起きているが、その度に困るのは旅行者だけでなく、旅行会社も顧客に代替案提示と困難な手配を強いられる。英国の多くの家族にとって毎年夏の旅行ができなくなれば一大事だ。

 空港のストライキは航空機発着ができなくなる航空会社にも災難だ。英国の空港職員の多数は、チェックインスタッフ、荷物係、保守担当者を含め労働組合に加盟する。組合は2年半で7.3%賃上げを要求して効果的な最繁期のストライキを予告し、ヒースロー、ガトウィック、スタンステッド各空港で賃金交渉を行ってきた。8月7日に予定された2日間のストライキは前日深夜に取り消されたが、予防措置として177便が取り消された。ヒースローは1日1300便発着、22万人が利用する。賃金交渉は続き、組合は8月23日にもストを予告している。ブリティッシュ・エアウェイズとパイロット組合の紛争では裁判に訴えた会社側が敗訴しストライキ阻止に失敗した。本稿執筆時にも協議は続き、組合員90%が賛成するストが決行されるかどうか不明だ。ライアンエアーのパイロットも賃上げ交渉が解決しなければヒースロー、ガトウィック空港発のフライトが影響を受ける。

 欧州の航空旅行者は、フライトがスケジュールどおり運航されない場合、EU規則で一定の権利が保証される。ストライキで旅行に影響を受ける場合、フライト遅延に関するEU規則で「特殊事情」と規定され、旅客への補償額は3時間以上の到着遅延について250~600ユーロに限定される。この規定は、EU域内空港発のすべてのフライトと欧州外から出発するEU航空会社に適用される。

 旅客が補償を受けられる遅延の原因は、航空会社の管理できる範囲にあることが必要で、天候、安全警報、航空管制官不足などの特殊事情は対象外。ストライキによる遅延は特別で、事情によってフライト遅延に簡単に補償金を支払う会社もあるが、厳格にクレームに対処する会社もある。しかし遅延の原因が何であれ、航空会社は足止めされている旅客に必要に応じて食事や宿泊はもちろん、必要ならそれがライバル航空であっても、可能な限り迅速に代替便を提供しなければならない。

 遅延の原因が航空会社のスタッフのストライキなら、旅客はより大きな補償を受けられる。労働争議は航空会社の責任で特殊事情は理由にならない。航空会社スタッフによるストライキによって、英国発着の旅客のフライトが取り消されれば、EU規則により旅客は満額の返金あるいは最寄りの空港から目的地まで代替便提供を受けられる。

 そして航空会社は追加の旅行費を負担するかストライキ終了後に代替便を提供することもある。ピークシーズンの代替便予約は簡単でないから、この権利は多くの旅行者に慰めにならないかもしれない。専門家は航空会社のストライキ発表の前に、旅行者はキャンセルまたは遅延するフライトに補償請求できる旅行保険を検討しておくことを勧める。