2019年9月2日 8:00 AM
京都アニメーションへの放火は本当に痛ましい事件だった。宿の外国人ゲストからも何回かこの件について聞かれ、京アニの人気の高さを思い知った。去年、「無理なのは知ってるけど京アニで働きたい」と、せめて見学を、と来日した中国人女子ゲストもいたっけな。ニュース映像でも、献花台で泣き崩れる中国人大学生の姿が映っていた。
アニメ文化、ここまで中国に浸透してきたんだなあ……。それを象徴するような1冊がこちらの本。
著者は日本在住の中国人女性。コミケで販売していた冊子を再編集した本で、内容はタイトルどおり中国語のオタク用語辞典。「腐女子」「クラスタ」「薄い本(同人誌のこと)」など、ネットスラングやオタク用語を中国語ではどう表現するのか、また中国独自のオタク用語、ネットスラングにはどのようなものがあるのか、言葉の誕生の背景説明や用例を交えて紹介したユニークな1冊だ。ちなみに上記の単語はそれぞれ「腐女」「飯圏」「本子」。
全年齢向けの健全コンテンツを「清水」、未翻訳の漫画やアニメを「生肉」と呼ぶなど、漢字表現の多様さ、面白さに感心する一方で、「漢化組・字幕組」(「生肉」を翻訳するファンの自発的組織)、「自干五」(民間の自発的な五毛党=政府寄りのネット工作員)など、中国の社会事情が透けて見える用語に「ほほぅ」となったりする。また、「○ちゃん」が「醤(ジァン)」、「○さん」が「桑(サン)」など、台湾で普及していた日本語がオタク用語で復活しているのも興味深い。
日韓関係も同じことがいえるが、政府同士がいかに仲が悪くなろうとも、中国と日本のカルチャーの結びつきは年々深まっている。旅も含めた平和的な民間交流さえ途絶えさせなければ、未来はそんなに暗くない、と思いたい。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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