海外旅行の新目標を考える、ポスト2000万人をどう描くか

2019.08.12 08:00

22年をピークに海外旅行市場は減少に転じるとの予測もある
(C)iStock.com/marchmeena29

海外旅行市場が好調に推移している。昨年、過去最高を記録したのに続き、今年は旅行業界悲願の2000万人突破も視野に入る。一方で市場の好調とは裏腹に旅行業界の足元はおぼつかない。果たしてこれが旅行業界が夢見た2000万人時代の姿だったのか。そして、ポスト2000万人をどう描くのか。

 日本政府観光局(JNTO)によると、海外旅行者数は1月こそ前年比2.0%増にとどまったが、2月10.4%増、3月6.8%増、4月22.8%増、5月3.9%増、6月7.0%増で、1~6月の半年間の累計でも前年同期比8.6%増の954万2400人と好調だ。仮に残り半年間も同じ伸び率となれば1100万人を超え、年間合計では2000万人を突破する計算だ。いよいよ、海外旅行2000万人時代が見えてきた。

 このところの海外旅行市場は好調を持続してきた。海外旅行者数は16年から3年連続で伸びており、18年の前年伸び率6.0%は、最近3年(16年5.6%増、17年4.5%増)の中でも最も高い伸び率となっている。こうした勢いに乗って、18年の日本人海外旅行者数は前年より106万人増の1895万4031人となり、12年の1849万657人を46万人上回る過去最高となった。

 JTBが7月24日に発表した「JTB REPORT 2019 日本人海外旅行のすべて」では、18年の海外旅行の好調さの要因として、訪日外国人旅行者の増加による航空座席の増加により訪日旅行と海外旅行の双方が活発化したことを挙げたのに加え、もう1つの大きな要因として若年女性を中心とする若年層の出国率が高まったことも挙げる。

 実際に出国者統計を年齢別(5歳ごと)に見ると、出国者数の伸び率が最も大きかったのは20~24歳の13.8%増で、次いで15~19歳の13.0%増。10~20代の若者の好調さが際立っている。さらに性別を加味して伸び率の高いグループを見ると、1位が20~24歳女性の15.5%増、2位が15~19歳女性の14.9%で、以下、70歳以上女性(13.3%増)、10~14歳女性(12.9%増)と続く。若年、それも女性が海外旅行市場を牽引している実態が如実に表れている。また、20~24歳女性の出国率が前年より5.1ポイント増の40.3%に、25~29歳女性が3.8ポイント増の34.1%に向上しており、出国率そのものと出国率の伸び率の両方とも、20代女性が1位と2位を占めている。

 デスティネーション別の動きを見ると、鍵を握るのは韓国だ。18年の日本人旅行者数は27.6%増の295万人となり3年連続プラス成長。韓国観光公社によれば、1~6月は連続20%以上の伸びを続けており、累計で26.6%増の165万人。しかし再び日韓関係がぎくしゃくしており、今後の動向は予断を許さない。

 台湾の18年は3.7%増・197万人で200万人に迫る勢い。今年は1月こそマイナス成長を喫したが、1~6月累計で8.1%と高い伸びを維持する。タイは昨年の日本人旅行者数が7.2%増・166万人で今年も好調を持続。2月(12.2%増)と4月(25.6%増)に2桁成長を記録し、1~6月は10.2%増の86万3887人で推移する。香港は昨年、4.7%増・129万人の日本人旅行者が訪れたが、今年は1~5月累計で11.1%増とさらに伸ばした。このほか、ハワイは昨年1.0%減だが、1~5月は5月を除きプラスで推移している。

下期も好調維持の見込み

 下半期の見通しはどうか。後半戦の幕開けとなる夏休み商戦はまずまずの状況だ。JTBが発表した今年の夏休み期間の旅行動向調査では、海外旅行は3.5%増の299万人が見込まれ、00年以降の調査では過去最高になると予測されている。根拠としては、円高傾向や供給座席の増加などが挙げられている。

 阪急交通社も夏休みの予約が好調としており、特にヨーロッパは前年比12%増、お盆の期間に限れば39%増で、全方面でも5%増を見込む。日本旅行もヨーロッパ方面が前年比25%増、アジア各方面も5~30%増という。

【続きは週刊トラベルジャーナル19年8月12日号で】

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