CDMEとPDM、米DMO人材育成プログラムの研究

2019.07.29 08:00

日本版DMOを世界水準に引き上げていくために
(C)i.Stock.com/Choreograph

わが国の観光地域づくりの中心を担う日本版DMOはすでに登録法人が120を超えた。しかし国が目指す「世界水準のDMO形成」にはDMO全般の底上げが必要で課題も多い。なかでも人材確保とその育成は喫緊の課題に挙げられる。

 日本版DMOは登録制度が整備され、欧米のDMO並みに形が整った組織が増えている。一方で形はできたものの、その機能性と結果を出す力に関しては欧米DMOと差があり、世界水準に至っていない日本版DMOが多数を占めるのが現状だ。

 日本版DMOを世界水準に引き上げるためには何が必要か。観光庁の「世界水準のDMOのあり方に関する検討会」は中間とりまとめで、課題の1つに「出向者が中心となっている組織では、専門的なスキルの蓄積や人脈の継承が困難であり、組織としての専門性の維持、向上に課題を抱えている」と指摘している。そのうえで改善の方向性については「組織全体の専門性を維持・向上することが可能になるよう、プロパー職員の確保・育成と、即戦力となる外部人材の登用の両面について取り組みを実施するべき。その際、マネジメントスキルを客観的に測定する外部指標の活用等も検討すべき」と提言。さらに「人材育成プログラムの創設、人材採用バンクの活用等を検討するべき」とも指摘している。世界水準のDMOに向けて、欠けている重要なピースの1つが人材なのだ。

 DMO人材の育成に関しては、日本観光振興協会が日本観光振興アカデミーを通じてDMO人材の育成や教育プログラムの開発に取り組んできた。また、経済産業省も産学連携サービス経営人材育成事業の一環として、「観光地経営を担う日本版DMOの人材育成プログラム」を実施。全国各地での人材育成を後押しするインターネット経由の遠隔地講座、Edtechを活用した育成プログラムも開発している。さらに、全国の各自治体では、DMOの人材育成プログラムの開発、運営を強化しており、民間事業者への委託形式で人材育成に取り組むケースが多くみられる。

 このような、人材育成に向けたさまざまな取り組みが並行して進行しているものの、中間とりまとめでも指摘されるように、効果的な人材の育成や登用を図るには、人材のスキルや能力を客観的に測定する指標が必要となり、その指標作り、あるいは外部指標の導入に関しては改善、工夫の余地がある。その指標という観点で参考になるのがDMO先進国の1つである米国の取り組みだ。

 米国のDMO主体の業界団体、Destinations International(DI)は、全米の国際観光地域マーケティング機関が構成メンバーとして参加しており、前身の組織から数えると実に105年もの歴史を持つ団体だ。構成メンバーは563組織・5648人(18年度アニュアルレポート)に達する。DIはメンバーからの会費で運営されているが、会費は各DMOの予算規模に応じて設定され、DI年間事業費は約162万ドル(18年度)となっている。

 活動内容はDMO関連の各種情報発信や調査、ネットワーキング、研修、人材育成と教育プログラムの開発、資格認定などだ。注目されるのはDIが開発・運営している人材育成プログラムと資格認定だ。プログラムはDMOの幹部職員向けの観光地域管理経営者認証制度(CDME:Certified Destination Management Executive)と、実務専門家向けの観光地域管理専門家認証制度(PDM: Professional in Destination Management)などで、プログラム修了者には資格を認定している。

 CDMEは経験のあるDMO専門家がキャリア向上を目指して受講する高度な教育プログラムであり、市場の変化や競争へのDMO幹部としての対応力を鍛え養うのが目的で、資格取得者にはDMO幹部の道も拓ける。PDMは専門家としての基礎的なスキルや知識の習得を目指すものだ。

 CDMEもPDMも米国のDMO業界では人材の評価指標として信頼され、18年のCDMEプログラムは292人、PDMは92人が受講している。

世界水準に引き上げるために

 米国ではこのようにCDMEおよびPDMがDMO業界で広く認知されており、各DMOは人材採用や登用に際して両資格を人材評価の客観的な指標としている。日本の現状ではCDMEやPDMに相当するような統一的な人材の評価基準が存在していない。それが人材確保や人材の流動性を確保するうえでのネックにもなっている。

【続きは週刊トラベルジャーナル7月29日号で】

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