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IPW、米国旅行素材のパワーでエンタメ大国アピール

2019年7月22日 3:26 PM

オープニングのテープカット

米アナハイムで6月1~5日、米国最大のトレードショー「IPW(インターナショナル・パウワウ)」が開催された。日本からは昨年より2倍近い約120人の旅行業関係者が参加した。

 IPWは今年で51回目を迎え、アナハイムで開催されるのは07年に続き2回目となる。米国のサプライヤーをはじめ、世界70カ国を超える国々から1300人のバイヤー、500人のメディアなどが集結し、3日間(6月3~5日)にわたって約11万件に上る商談が行われた。これにより、今後3年間で生み出される経済効果は約55億ドルと試算されており、昨年の47億ドルを上回った。日本からは、観光庁の田端浩長官やJATA(日本旅行業協会)の幹部をはじめとした旅行業関係者やメディアが参加した。 

 IPW開催を前に米商務省が発表した18年の訪米国際旅行者数は、前年比3.5%増の7961万7625人となった。IPWを主催するUSトラベル・アソシエーション(UST)のロジャー・ダウ・プレジデント兼CEOは会見で回復基調に喜びを示した。日本市場を見ると、18年は2.8%減の349万3313人が米国を訪れた。16年以降減少が続いていたものの、19年1~5月は3月を除くすべての月でプラス成長となるなど、明るい兆しが見て取れる。

 一方で、ダウCEOは、「ロングホール市場に目を向けると7%も国際旅行者は増えている。しかし、米国は近年ロングホール市場のシェアを落としている」と改善の余地があるとの考えを示し、さらなる努力の必要性を訴えた。また、「米国において旅行産業は経済・雇用の観点から非常に重要」と述べ、ドナルド・トランプ大統領とも考えを共有していることを強調した。

豊富なネットワークの機会

会場となったアナハイムコンベンションセンター

 IPWでは、商談や会議以外の時間もネットワークの機会を促すイベントが至る所で繰り広げられた。カリフォルニア観光局は期間中、会場近くに「カリフォルニアプラザ」を設置し、朝食からハッピーアワーまで参加者がいつでも自由に立ち寄ってカリフォルニアを体感できる空間を提供した。また、南カリフォルニア州はロサンゼルスからサンディエゴまで続く海岸線も見どころのひとつ。6月3日の夕方からはサーフィンの聖地としても名高いハンティントン・ビーチでのパーティーを開催した。サンセットが望めるビーチで参加者同士が1年ぶりの再会を喜び合う光景が見られた。

 昼食会では、往年のロックスターであるビーチボーイズやブロードウェイのショー、R&Bシンガーのジェイソン・デルーロらがステージを盛り上げ、会場は熱気に包まれた。夜はディズニーランド、ナッツベリーファームなどでのイベントが連日行われ、開催地を中心とした米国旅行の魅力を存分にアピールする力強さ。エンターテインメント大国ならではの実力を感じた瞬間だった。

  米国観光のプロモーションを担うブランド USAのクリストファー・L.トンプソン・プレジデント兼CEOは会見に臨み、「過去6年間で660万人の訪米旅行者と218億ドルの消費、年間5万2000人の雇用を生み出し、計477億ドルの経済効果を生んだ」とマーケティング成果をアピールした。ブランドUSAが今年計画するマーケティングや主なプロモーション展開の中で目玉は IMAX映画の3作目の公開だ。16年から制作を手掛け、好評を博している。3作目は米国の大自然がテーマとなり、先住民族初の宇宙飛行士とアラスカのパイロットが米国の大自然を旅するストーリーとなる模様。まずは20年2月にワシントンで公開する。日本でも公開予定だ。

  アナハイムを訪れる大きなきっかけとしては、17年にエンゼルスに移籍した大谷翔平選手の存在は欠かせない。IPWでは、バイヤーやメディア向けに半日観光が用意され、アートやショッピング、クラフトビール、アウトドアなどのテーマから興味のあるツアーを選べる。その1つにエンゼルス球場のバックヤード見学などが含まれるスポーツを軸にしたツアーがあり、多くの日本人が参加した。参加理由として多くの旅行会社が挙げたのは「日本での人気の高さ」。エンゼルス球場は20人集まると1枚10ドルから観戦できる団体向けの割引特典もあり、修学旅行などのコンテンツとしても期待できる。また、今回はアナハイム観光局から日本人の参加者向けに試合観戦が用意されるなどの“おもてなし”もあった。

大谷選手のポスターも飾られてれているアナハイム球場入り口

周遊ツアー商品化へ窓口提案

 6月3日には、ブランド USAと JATA(日本旅行業協会)による米国への観光促進のための日米観光会議が開かれた。米国側はブランド USAのトンプソンCEO、日本側は観光庁の田端長官や JATA の田川博己会長らが出席し、日本市場向けの施策の報告と意見交換を実施した。 

 トンプソンCEOは、「18年の訪米市場で日本は4位だった」と語り、長らく日本市場は米国にとって重要な地位を維持している旨をアピールした。また、日本の旅行会社向けのセミナーやファムツアー開催など、JATAが実施してきた送客協力について感謝の意を述べた。 

 JATAの田川会長は、20年に予定されている羽田線の国際線増枠分の約半数が米国路線となることに言及し、訪米旅行者の増加に期待を示した。また、日本での海外旅行商品の傾向を説明するとともに、より魅力ある米国旅行商品の造成について言及した。たとえばヨーロッパツアーでは1つの国を極めるような売り方が多いことを引き合いに出し、米国も各地を巡り魅力を掘り下げるような商品を造成しやすくする仕掛けを求めた。一例として挙げたのが、各州ごとにブースを区切った IPWの商談会のあり方で、「大陸全体の周遊ツアーをつくりたいと考えるプランナーが最初の入り口として尋ねる窓口があってもいいのではないか」などと提案した。また、田端長官は、「日本においても都市部だけでなく地域に来てもらえるような誘客に力を入れている」と語り、「各地域の DMOに対しても、IPWが実施する地域の商品化に向けた手法は参考になる」などと語った。

  来年の IPWは5月30日~ 6月3日にラスベガスで開かれる。ラスベガス観光局のスティーブ・ヒルCEOは、「IPWは業界トップの意思決定者などが集い、国際的規模でラスベガスの地位を高めることができる絶好の機会」と開催への期待を示した。ラスベガスは米国のトップデスティネーションの一つとして海外旅行者を受け入れており、近年、革新的な技術を用いた新施設の建設ラッシュなどで急速に発展を遂げている点も見逃せない。ラスベガスでのIPWは前回の13年までに4回開催されているが、同年以降、スポーツやコンベンション施設などに数十億ドル規模の投資が行われている。来年の IPWでは新しいラスベガスの姿を目にするに違いない。