相談料をとろう、店頭サービスの対価を考える

2019年7月15日 8:00 AM

JTBが4月から一部店舗で相談料の収受を開始した。これまでほとんどの旅行会社が二の足を踏んできた相談の有料化に、試験的とはいえ最大手が踏み込んだインパクトは大きい。店頭サービスの価値の見直しが議論される契機になりそうだ。

　相談料の収受は旅行業法で認められ、標準旅行業約款にも明記されており、多くの旅行会社が約款上は相談料を徴収することにしている。しかし、実際には相談料を取らないのが業界の慣習となっており、徴収しているのはコンサルティング特化型などの中小旅行会社のごく一部に限られる。

　そこに大手旅行会社として風穴を開けたのがJTBだ。まずは昨年10月から首都圏の1店舗で試行し、問題点の洗い出しや一定のルール化を図ったうえで、今年4月から全国12店舗（北海道2店・東北8店・首都圏2店）を導入店舗と定めて相談料の徴収を開始した。これまで徴収していなかった理由について、同社はそもそも慣習がないことや、カウンター来店客と会話する中で相談料について案内するタイミングの難しさを挙げている。

　来店客に対して、いきなり相談料の徴収を告げるのは接客業としてはばかられる面があるのは事実だし、せっかくの来店客を逃したくない心理が働くのも無理はない。かといって、相談の途中で切り出すのも確かにきっかけが難しい。それでもJTBが試験導入に踏み切ったのは、これが第3の創業と位置づけて同社が推進している経営改革につながる取り組みだからだ。

　第3の創業の改革では、旅行業モデルからソリューションモデルへの転換とコミッションビジネスからフィービジネスへの転換という2つのビジネスモデルの大転換を目指している。また、個人旅行事業に関しては、OTA（オンライン旅行会社）にはできないヒューマンタッチの質の高いサービス提供に舵を切っていく改革方針を打ち出している。こうした改革における店頭の役割と位置づけについて、髙橋広行代表取締役社長は5月下旬に開いた19年3月期決算会見の席上で、「インターネット販売と店舗販売のチャネルとしての役割を明確化し、店頭では今後、じっくりと時間をかけて顧客とフェース・トゥ・フェースで向き合い、コンサルティングをしながらしっかりと質の高いサービスを提供していく考えだ」と説明している。

　JTBは高品質なサービス提供の拠点となる店舗の実現に向けて、さまざまな取り組みを行っている。たとえば、来店客の最大の不満要因である「待たされる」状況を解消するため、昨年4月からはほぼ全店舗で来店予約制を導入した。また、よりパーソナライズした高品質なサービスを提供するため、利用積算ポイントに合わせてプラチナ、ゴールド、シルバーの3つのステージに分けたJTBステージ制も導入している。相談料の徴収も、こうした店頭改革のための施策の一つでもある。

対価に見合うサービスと人材

　JTBが定める相談料は、旅行計画を作成するための相談として国内旅行で2160円、海外旅行で5400円が基本料金だ。基本料金で相談できるのは30分までで、以降は30分ごとに国内旅行で2160円、海外旅行で3240円が加算される。ただし、相談日から一定期間内（地域により異なる）に成約した場合は、旅行代金の一部に充当することとし、実質的に無料となる。

　とはいえ、30分で数千円という相談料は、商品単価と比べても小さからぬ額で、このような相談料が顧客に受け入れられるか否かは現時点では不明だ。JTBは徴収開始から約1カ月の時点で、まだ十分なデータは取れていないとしながらも、店頭から報告された顧客の声の一部として「時間を気にせずゆっくりと相談できるようになって良かった」という意見がある一方、「相談料を徴収するようになったのはなぜか」と質問を投げかける声もあったと明かす。同社は店頭での顧客の反応をしっかりと見極めたうえで、導入店舗を拡大していくかどうかを判断していく方針を示している。ただし、現時点でまったくの白紙で、12店舗での先行導入が全面展開への前段階となるかは不透明な状況だ。

【続きは週刊トラベルジャーナル19年7月15日号で】[1]

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