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スタートアップが狙う民泊とホテルの隙間市場

2019年7月15日 8:00 AM

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ソンダーは11都市に2200棟3300室を保有

 エアビーアンドビ―など民泊市場は、欧米で規制の強化や環境問題、予見できないホストの問題などもあり、需要の伸びが鈍化している。しかし最近、この民泊と従来のホテルの隙間にニッチ市場が生まれた。ホテルと民泊、それぞれの長所を生かした宿泊サービスを提供するスタートアップが、主要都市の商業・居住用ビルを借りて客室を設け規模拡大している。大手不動産会社や投資ファンドも支援する。

 多くの旅行者は個性の乏しい味気のないホテルより、その街に滞在している感覚、ローカル体験を求める。民泊モデルだ。一方、ホテルには品質の高さと洗面道具から新しいシーツまでサービスの一貫性がある。新興企業はホテル同様の顧客サービスとアメニティを提供する。宿泊ユニットが集中する都市では、定期的に清掃員やスタッフが巡回するが、他の地域では電話センターが各施設の宿泊客のあらゆる注文に応じる。

 各ユニットに地域社会の文化を反映させ、上質の居間、台所、家具を揃え、装飾などにホームの温かみを出すデザインが重視される。全体として4つ星~5つ星ホテルの高級感を打ち出し、原則として料金はホテルより低廉。レジャー客だけでなく上級のビジネス客や、広いスペースでグループもターゲットにする。以下に3社を紹介する。

 10年前に設立されたリリック社は、エアビ―と同じサンフランシスコを本拠とし、最初の垂直統合型短期レンタル会社で、小規模のラクジュアリーアパートメントを保有する。すでにワシントン、オーランド、ダラスなど全米主要都市で380棟のアパートを運営し、これから1年で2000棟まで拡大を目指している。リリックの宿泊ユニットは、地域のデザイン専門家が制作したラクジュアリーのブティックホテル並みで、部屋の最高級の備え付け家具が特徴。買い置き十分なキッチン、組み込み洗濯機&ドライヤー、ハイスピード・インターネット、ネットフリックスを備える。

 同じくサンフランシスコで14年設立のソンダ―社は現在11都市に2200棟3300室を保有する。シカゴではライセンスを得たバケーションレンタルユニットを運営し、バンクーバーではホテルのライセンスが必要で、規制の厳しいサンフランシスコやニューヨークでは最低30日滞在が必要だが、各都市の規則に合わせ組織的対応に注力する。

 ニューヨーク本拠のドミノ社は16年創業で、最初の宿泊施設を南部のニューオーリンズ州に設けた。各部屋は通常のアパートと同じで、149ドル(約1万6400円)から1泊単位でレンタルする。キッチンや洗濯機、ルーフトップのプールが利用できるほか、ホテルでは必須のケーブルTVサービスや無料のトイレタリー用品なども完備する。同社は主要都市でさらに15棟のアパートメントホテルを開設する計画だ。

エアビーも新プロジェクト

 エアビーも新市場のプロジェクトを拡大している。ニューヨークのロックフェラーセンターで10フロアを宿泊施設に改造して短期レンタルを開始した。マリオットは5月に米国、欧州、カリブ海の100市場で2000以上のホームレンタルを開始すると発表した。アコーやハイアットも同じく新市場に参入して新興企業とシェア争いを始めた。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。

Endnotes:
  1. [Image]: https://www.sonder.com/