数字で探る地域の観光、都道府県の予算・宿泊者数・外客消費

2019年6月24日 8:00 AM

　全国各自治体の観光関連予算に関し、本誌では毎年アンケート調査を実施しており、今年も4月下旬に調査を行った。全国47都道府県と20の政令指定都市に調査協力を依頼し、47都道府県と、神戸市を除く19の政令指定都市、合計66の自治体から19年度の観光関連予算に関する回答を得た。調査は予算の増減を時系列で比較しやすいよう、予算額は本予算額での回答を求めている。しかし、首長選や組織改正などの諸事情により、前年予算額と単純比較することでは実態を把握するのが困難な自治体が含まれる。そのようなケースについては、別掲の19年度観光振興関連予算表の備考欄に特記事項を記しておく。

　観光関連予算について回答のあった66自治体のうち36自治体（24都府県・12政令指定都市）が前年度より予算を増額している。前年度より予算を増額した自治体数は、過去5年では14年度36、15年度25、16年度44、17年度44、18年度40と推移しており、19年度の36は少ない方だ。また、2桁増となった自治体数も18年度の25自治体に対し19年度は21自治体（13都府県・8政令指定都市）と、こちらも減少している。予算額増も2桁増も2年連続の減少だ。半分以上の自治体が予算額を増やしており、観光振興に対する自治体の意欲は全体として高いものの、増額ペースは明らかに落ちており、ひと頃ほどの熱量は感じられない。

予算4倍増となった岐阜県

　とはいえ、3～4倍の増額を行っている自治体もある。最も大幅な増額を果たしたのが4倍増の岐阜県だ。同県は来年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主舞台となることが決定しており、観光誘致の大きな起爆剤となる大河ドラマの誘致成功を受けて、千載一遇のチャンスを生かすべく大幅な予算増額を図った。「大河ドラマの放送を生かした魅力づくり」に1億3700万円を割く。

　横浜市は予算額3.4倍増だ。ラグビーW杯開催年、来年の東京五輪開催や羽田空港の発着便増加、クルーズ船の寄港をテコに、20年以降飛躍するための集中的取り組みを行うために大幅な増額となった。最も大きな増加要因は、MICE強化の一環としてパシフィコ横浜の隣接地で進める「20街区MICE施設整備事業」で、22億5190万円を投じる。ほかにW杯観戦客の回遊性向上などの横浜おもてなし事業を倍増の約1億2600万円に増額、観光・MICE情報発信事業にも倍増以上の約1億3300万円を割く。

　2.3倍増の高知県は、17年度の2倍増の反動で18年度が約25％減だったが、19年度は再び大幅増額し、四国で最も観光関連予算額の豊かな自治体となった。「435万人観光の早期定着」を掲げ、歴史と食に加え、19年度は「自然＆体験」を前面に打ち出したキャンペーンを展開。同キャンペーンの事業費補助金として5億3890万円を費やす。

　2年連続で予算を増額したのは一昨年が27自治体、昨年が26自治体だったのに対し、19年度は21自治体（14都県・7政令指定都市）でやや減少気味だ。2年連続で予算増となった自治体のうち、大幅な増額となったのは岐阜県のほかでは、広島市の65.1％増や京都市の49.0％増だ。広島市は新規事業として「水辺のライトアップ事業」に4470万円を投じるほか、平和記念公園レストハウスの改修に6億3600万円を費やす。京都市は、夜観光の魅力アップによる宿泊観光の推進（1億5600万円）や観光・文化コンテンツの発信力強化事業（1億2730万円）に力を注ぐほか、オーバーツーリズムの課題が浮上しつつある京都市だけに、昨年に引き続きマナー啓発に取り組んでおり、「インバウンド需要獲得強化・マナー啓発事業」に3480万円を割いている。

　地域別（運輸局管内別）にみると、比較的に予算増の自治体が多いのは、やはり観光需要が集まる関東（12自治体中6）、中部（7自治体中5）、近畿（9自治体中7）だが、19年度は四国も4自治体中3県が増額となっている。反対に東北は7自治体中3県、九州は10自治体中3県市のみの増加だ。九州は昨年も増額は4県市にとどまっており、2年連続でふるわない。

【続きは週刊トラベルジャーナル19年6月24日号で】[1]

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