地球温暖化対策訴えるフライトシェイムとグレタ効果

2019.05.27 08:00

 「フライトシェイム(空飛ぶ恥)」という新語がドイツでは今年になりメディアに頻繁に登場し、業界では「グレタ効果」なる言葉も現れた。スウェーデンの15歳の少女グレタ・トゥーンベリが18年8月に地球温暖化に抗議して学校ストライキ(未来のための金曜日)を提唱し、国会前に座り込んだ行動に関連する。彼女の主張は賛同を得てすぐに欧州に、そして世界に広がり、彼女は昨年12月ポーランドで開かれたCOP24、今年1月のダボス会議で演説し、地球温暖化対策の即実施を訴えた。

 スウェーデン人はその前から気候変動をより強く肌身で感じている。同国の気温上昇は地球平均の倍の速度で進んでいるが、地理的位置と高生活水準から航空機利用が多い。チャルマース工科大学の試算では1990~2017年に航空機による1人当たり温暖化ガス排出量は世界平均の5倍、スウェーデン発国際便の排出ガスはその間に61%増加した。温室効果ガスを大量に排出する航空機利用に後ろめたさを感じ、それは恥であり排出量の少ない交通に替えようという意味の「フライトシェイム」という言葉が広まった。

 ドイツでは環境保護関係者が以前から空の旅の制限や航空機から鉄道への乗り換え、公益法人アトムスフェアのような組織を通じて航空利用時のカーボンオフセットを提唱するが、トゥーンベリの声は広く早く社会に強い衝撃を与え、うねりとなり、空飛ぶ恥という言葉も急に広まった。

 ドイツの業界はフライトシェイムが消費者の休暇旅行にどう影響を与えるか、グレタ効果と呼んで成り行きを見守っている。業界はこの夏の空港混乱を心配していた。管制や航空会社の問題というより、航空機利用者の激増と高まるニーズによるものだ。個人の環境意識は相当高いものの航空需要は過去最高。ドイツ空域のフライト数は昨年新記録となり、今年は4%増加が見込まれる。

 「未来のための金曜日」運動は特に学生に関心が高く、3月15日の集まりでは世界125カ国150万人が参加。ドイツでは世界最大規模の30万人の学生、一般人が集まった。日本でも今年集会が始まり、3月には125人が参加した。ドイツの若者は高校卒業試験を終えると航空機で遠い国へ打ち上げ旅行に出ることが多いが、手段を鉄道やバスに替えたり、近場のハイキングにしたり、簡単には空の旅に飛びつかなくなる傾向がみられる。

 スウェーデンでは3月のアンケート回答者の2割が航空機から鉄道に替えたという結果が出た。スウェーデン鉄道は商用旅行者で21%の増加をみている。政府も欧州重要都市への夜行列車の復活を検討中だ。一方、国内航空便は昨年3.2%減少したが、新航空税やLCCのネクストジェット破産によるとの見方もある。

欧州の消費者だけが控えても

 現在のところグレタ効果の数字的な証はないが、業界は当惑している。中国では20年までに50の新空港が建設され総計260となり、インドでは毎年2桁航空便が増えるのに、欧州の消費者だけが空の旅を控えても温室効果ガスは減らない。航空機だけがスケープゴートになるのもどうかという戸惑いの声も聞かれる。あと10年、地球平均気温上昇を1.5度以内に抑えないと観光も大変なことになると分かっているのだが。

グループ4●旅行業界と外国政府観光局で永年キャリアを積んできた4人により構成。大学の観光学部で教鞭をとったり、旅行業団体の幹部経験者もいる。現在、外国メディアで日常的に海外の観光・旅行業界事情に接し、時宜に応じたテーマで執筆している。