DMOのためのデジタルマーケティング、データ分析からプロモーションまで

2019.04.22 08:00

全国のDMOを見てもデジタルマーケティングの成功事例はまだ少ない 
(C)iStock.com/artisteer

訪日観光分野でデジタルマーケティングの重要性が指摘されて久しい。日本政府観光局(JNTO)や一部DMO(観光地経営組織)で取り組むが依然課題も多い。特に取り組みの濃淡が見られるDMOのために、データ分析からターゲットへのアプローチまでデジタルマーケティングのイロハを紹介する。

 「明日の日本を支える観光ビジョン」で掲げた目標の確実な達成に向け、各省大臣が参加して開催する観光戦略実行推進会議に今年1月に出席したエクスペディアホールディングスのマイケル・ダイクス代表取締役は、インバウンドにおいて日本はデジタルマーケティングで後れを取っていると指摘した。

 同氏はその根拠として、日本の旅行市場におけるオンライン浸透率が40%に満たず、欧米の50%前後と比較して低いことや、広告市場におけるデジタルマーケティングのシェアが日本は約2割で、6割前後の英国や中国、約5割の米国と大きく水をあけられている点を挙げている。また過半数の外国人旅行者がオンラインで訪日を検討・予約する現実がある以上、「過半以上の広告予算をデジタルマーケティングに投入するべき」とも指摘した。

 これらの指摘に対し会議主催者である菅義偉官房長官は「本日はデジタルマーケティングを強化すべきだというご意見をいただいた」と述べ、指摘を受け止める姿勢を示した。

 観光庁や日本政府観光局(JNTO)もデジタルマーケティングに関する問題意識を持っており、観光戦略実行推進会議の指摘を待たずして手を打ちつつある。すでに17年10月にはJNTOがデジタルマーケティングの本格導入に向け専門部署のデジタルマーケティング室を設置して対応に当たっている。

 また観光庁の19年度予算では「ICTの活用等による先進的プロモーションの実施」のための予算として前年度の約4倍に相当する51憶4900万円を計上している。予算は大きく分けて「データの蓄積と活用」と「先進的なプロモーションの実施」に充てられる。データの蓄積と活用に関しては、JNTOのオウンドメディアなどを通じて蓄積されるデータやビッグデータ事業者等の保有データ等を合わせて分析し、個人の関心度に合わせた情報発信に取り組む。また先進的なプロモーションの実施については、データ分析を生かしたグローバルキャンペーン実施や、地域の観光資源を活用したプロモーションの実施を想定している。

 JNTOはデジタルマーケティング室を設置して以降、デジタルテクノロジーを活用した情報発信チャネルの強化・拡大に取り組んでおり、18年2月には外国人旅行者向け公式グローバルウェブサイト(英語)を抜本的にリニューアルし、スマートフォンからのアクセスに適応するデザインと機能を前提にサイトを設計し直した。このほか、海外各事務所が設けているウェブサイトやSNSに関しても東京のJNTO本部がデザインや書式を管理しブランディングを統一する作業を行っている。

 また18年2月から開始した「Enjoy my Japanグローバルキャンペーン」にもデジタルマーケティング技術をフル活用。キャンペーンウェブサイトではサイト訪問者の興味関心に合わせて100万通り以上のパターンで自動生成されるパーソナライズムービーが視聴できる仕組みになっている。

 今年3月には海外メディア向け画像・映像サイトのジャパン・オンライン・メディアセンターも大幅リニューアル。単に画像や映像を素材として提供するだけでなく、テキスト素材をパッケージしたスペシャルコンテンツとして提供する新たな手法にも取り組んでいる。

JNTOがデータ蓄積と活用へ

 情報発信と並んでデジタルマーケティング室が担うもう1つの重要な役割は、データの収集・蓄積とその分析および活用だ。すでにJNTOのグローバルサイトを始めとするオウンドメディアや提供アプリ等からの各種情報を収集・蓄積し分析するためのデータプラットフォームを構築済みで、約1年間分のデータ蓄積がある。さらに、JNTOと接触のある外国人消費者だけでなく、日本に無関心な層を含むより幅広い消費者層のビッグデータを入手して、自ら蓄積したデータの分析や補正に生かすためVpon(ブイポン)やADARA(アダラ)といったグローバル規模のビッグデータ提供企業からもデータを購入できる体制を整えた。

【続きは週刊トラベルジャーナル19年4月22日号で】

関連キーワード